現在高校2年の文系です。数2が必須科目なのですが、将来使わなそうなことばかりやっている気がして嫌になります。日常なら中学までやってきたことでいい気がしますが高校の数学ができて役にたつことはありますか?
ほう、じゃあ将来使いそうなことなら一生懸命やるのかな、君は。本当?
ゲームは好きかな。それは将来役に立つからやるのかい?
漫画は読む?それは将来役に立つから読むのかい?
ちがうでしょ。面白いから、楽しいからやるんでしょ? つまり、君が数Ⅱをやりたくないのは、「役に立たないから」というのは言い訳で、実は面白くないから・興味が持てないから、なんじゃないかな。そこを自分で認めることができるなら、次を読んで欲しいな。『そうじゃない』と拒否するのも君の勝手だけどね。
ということを書いておきながら、私は君が興味のないことを無理してやりなさいと勧めたりはしない。だって、嫌なことを無理やり詰め込んだって身に着かないでしょ。そんなことは私が自分で経験してものすごくよく分かっている。
なので、私は君が数Ⅱ(に限らず数学)に興味を持ってもらえるように、ここから書いていこうと思う。上手くいくかどうかはわからないけどね。
良く、賢そうな(笑)大人が、中高生に「どうして数学を勉強しなければならないの?」と聞かれて、「論理的に物事を考える訓練のためだよ」などと答えているけれども、私はちょっと違うと思っている。そりゃあ、数学は論理だ。論理を無視しては成立しない。だからと言って、数学を学ぶと論理的に物事を考えられるようになるかというと、必ずしもそうじゃない。数学者に理屈っぽい人は確かに多いけど、彼らの日常の考え方や行動が全て論理的であるかというと、全然違う。数学の世界では、数学の厳密なルール(論理的思方法)を使うけど、一歩数学から離れると、全然論理的じゃなくなったりするのが人間だよね。学問の世界と実生活・その人の考え方の間には大きな壁があって、一人の人間の中にそれらは別々のものとして存在しているはずだ。
じゃあ、数学が必要な本当の理由・本質的な理由って何なの?っていう話をしなけらばならない。これは、実生活をすこし長く経験しないとわからないことなんだろうと思う。私は、コレには三つの理由があると思っている。
一つ目の理由:世の中の事象を読むため
高校生なら、偏差値は知っていると思う。ある程度の人数で試験を行なったときの点数の人数分布関数から出される数値なんだけれども、これは完全に積分を使っている。分布の関数(確率関数)はこんな式。
コレを図示するとこうなって、
aからbまでの確率は、下の図のようになって、面積分で求められる。
なので、横軸を点数とすれば、点数ごとの人数(面積)も求められるし、偏差等も分かる。偏差がわかれば、偏差値も出せる。
もし君が学校の先生になったとしよう。文系だから、英語とか国語の先生だとしても、定期試験後には必ずこんなグラフを作るだろうし、偏差値も出すと思う。これが積分を使っていることを知らないで、式だけ使って算出したり、数学の先生にまかせたりするのは、偏差値をつけられる生徒をバカにしていることになるよね。
偏差値だけじゃないよ。メーカーなどの品質管理だって、正規分布とその積分を使うんだ。君が品質管理部門に配属になったら、下の図を毎日使うことになるんだよ。これは積分そのものだよね。で、毎日3σ(さんシグマ)→0.3パーセント≒「千三つ」ということを呪文のように唱えることになるんだ。部品を作って、できた寸法のσが小さいほどその工程は優秀だってことはわかるよね。また、例えば許容寸法を3σまでにした場合、不良品は1000個に3個となるよ。σがものすっごく小さい場合、許容誤差を6σまで広げることができたりするけど、コレだと不良率は100万個に3.4個という素晴らしい値になる。こういうことは、積分を知らないと、ただの呪文に聞こえちゃうでしょ。
品質管理部門にいて、正規分布や積分を知らないなんてあり得ない。以上のように数Ⅱは大人になっても使うんだよ。
もちろん、経済学部に進むなら、微分・積分は絶対に必要だ。経済の世界で起きる事象を数学を武器に読み解く必要があるからね。他にも数学で読み解ける世の中の事象はたくさんある。そんな、役に立つ数学を学ばない手は無いと思うよ。
二つ目の理由:自然を深く理解するため
自然界で起きている現象を理解しようとすると、数Ⅱで学ぶことを全く知らないと、物凄く苦労するよ。例えば細菌は、ある温度では指数関数的に増殖したりするけれども、指数関数を知らなかったら、その増殖の凄まじさが理解出来ないんじゃないかな。文系の君が細菌の増殖速度を計算することはないのかもしれないけれども、そのことを理解できるかできないかで、実生活も影響を受けるはずだ。食中毒を防ぐためには食品に付着した細菌が指数関数的に増殖する温度に放置しないことが必要だと言う知識は重要だと思う。下の図の左側のような増殖速度だね。
ついでに書いちゃうけど、上の図の右側は、環境が無限の増殖を許さないときの増殖速度で、ロジスティック曲線と言うんだけどね。これも、数学で説明できる。ちょっと、面白くなってきたでしょ? 数学を数学として頑張るのは、数学が好きな人じゃないと難しいかもしれないけど、生物の分野とか、病気や食中毒を理解するときには必要な「道具」だし、自分が直接こうした関係の仕事に付かないのだとしても、専門家の言うことを理解したり、例えば自治体の職員として対策を考えたりするときの知識としては重要であったり必要であったりするんじゃないだろうか。ロジスティック曲線は知らないまでも、指数関数を知らない役所の人と、食中毒の対策を一緒にする専門家は、相当に大変だと思うよ。
数学が必要なのは、生物とかの世界だけじゃないよ。物理世界では、もっと数学が必要だ。物理学者やエンジニアにならないとしても、光が波である事を知っていることは、光と言う自然を理解するうえではとても意味のあることだと思う。少なくとも次の図とかは三角関数の公式を知らなくても知っておいた方が良いと思うんだよね。
で、このような波は、干渉したりして強めあったり弱めあったりするんだと言うことや、位相がそろうとかずれるとかしたら、どんなことが起きるのかは、三角関数と波のことをわかっているのといないのとでは全然違ってくるんだよ。
自然現象を数学的に理解することは、何も科学者の特権ではない。概念を理解しておくことが重要なんだと思う。速度変化を微分したら加速度が求められるということを知っておくことは、とても役に立つことだよ。もちろん、速度変化の式から加速度を求める方法は忘れたってかまわない。それは専門の人に任せても良いよね。
三つ目の理由:ウソや印象操作に騙されないため
そう、数学を学ぶことが必要なもう一つの理由はウソや印象操作を見破るためだ。多くは、中学までの数学で見破ることができるんだけど、ちょっと見てみようか。
下のグラフは日本共産党の機関紙「赤旗」に記載された防衛費のグラフ。ここ数年(当時は2015年頃)伸びていて2015年は過去最高だったと言いたいわけだ。
でも、よく見ると、左のスケールが4.6で始まり、5までになっている。嘘はついていないけど、明らかに誇張しているグラフだ。これを0から始めてみるとこうなるよね。
これは大騒ぎすることじゃないだろうというのがネトウヨの言い分らしいけど、確かにそうも言えるかなとは思う。日本の防衛費は、GDPの1パーセント以内、という政策がとられているのでこうなるんだけど、どう見ても「ただ1パーセント以内にしているだけで、無理して増額しているわけではない」とは見えるよね。
で、こうしたことは、日本だけ取り上げてもよくわからないから、世界と比較しようというのが正常な感覚だよね、それをやっている人が居て、対GDPのパーセントにしてみるとこうなるわけだ。
こうしてみると、日本の防衛費は、表示5カ国の中ではGDP 比は低く、しかもほぼ1パーセントで10年間変化していないことがわかる。
このくらい簡単なグラフなら高校数学の知識は不要だけど、「軸を適切にとる」とか、「比較すべきデータと一緒にグラフにしてみる」という基本的なことは、数学でグラフを書く訓練でも身に着くことだと思う。こうした、正しくものごとを読み解く能力のことをリテラシーというのだけれど、上で観たような統計リテラシー(統計を正しく読み解く能力)には、数学的な基礎は必要だよね。
さて、答えだ。
「世の中の事象を読み、自然を理解し、だまされたりしないためには、数学は必要。もちろん物凄く役に立つから、是非勉強すべき。」
参考
生物学 第2版 — 第45章 個体群と生物群集の生態学 —
確率変数、確率分布、確率密度関数とは~制御工学の基礎あれこれ~
グラフでウソをつく方法――統計リテラシーのための基礎文献(松谷創一郎) - Yahoo!ニュース



















