# Pro-800 (Prophet-600) 利用ガイド
1. [アーキテクチャの理解](#アーキテクチャの理解)
1. [Poly Mod セクション — 制約と活用](#poly-mod-セクション--制約と活用)
1. [Prophet-5 V プリセット変換の手順](#prophet-5-v-プリセット変換の手順)
1. [Pro-800が得意な音色領域](#pro-800が得意な音色領域)
1. [シーケンサー / アルペジエーター活用](#シーケンサー--アルペジエーター活用)
1. [DAW連携時の注意点](#daw連携時の注意点)
1. [他機材との音色補完ガイド](#他機材との音色補完ガイド)
Z80マイクロプロセッサ → DAC → CV(アナログ電圧) → CEMチップ
MIDIは外部インターフェースであり、内部のピッチ・フィルター制御はすべてDAC経由のCV。内蔵シーケンサー/アルペジエーターもZ80上で直接動作し、DACへ書き込む。外部MIDIからの入力は MIDI受信 → Z80パース → DAC → CV と一段階増える。
- CEM3320系フィルターだがProphet-5とは回路設計が異なる
- レゾナンスを上げると**Prophet-5より痩せやすい**傾向
- Z80によるデジタル制御エンベロープは滑らかさよりも**ステップ感**がある
- この「粗さ」と「太さ」がProphet-5にはない個性(洗練されていないが力強い)
### Pro-800独自の強み(vs オリジナル Prophet-600)
- **複数波形の同時選択**(Roland的なアプローチ — Saw+Pulseなど)
- Sync In / Filter CV In(外部CV入力)
## Poly Mod セクション — 制約と活用
| |Source Amount |Destination |
|------|--------------------------------------|-----------------|
|ソース |Filter Envelope (-5〜+5) / Osc B (0〜10)|Freq A, Filter |
|追加スイッチ|— |Unison Track, Off|
**重要:PW(パルスワイズ)へのPoly Modルーティングは不可。**
PW変調はLFO-Modセクション(PW A-Bデスティネーション)のみで可能。ただしLFOはグローバルなため、全ボイスが同位相で揺れる。Prophet-5のPoly Mod → PW Aはボイスごとに位相がずれるOsc Bで変調するため、コードを弾いたときに各ノートが異なるPW状態になる「揺らぎ」が生まれる。**ここはPro-800では原理的に再現できない。**
Prophet-5のPoly Mod → PW AはOsc Aのみだが、Pro-800のLFO-Mod PW A-Bは**両オシレーターに同時**にかかる。Osc AとBで異なるパルス幅の初期値を設定しておけば、同じLFOで揺れても倍音の変化パターンが異なり、PWM系パッドの厚みではPro-800に独自の良さが出る。
|------------|--------------------------|---------------|
|FM的金属音 |Osc B → Freq A(高め) |ベル、パーカッシブな倍音 |
|フィルター自己発振的動き|Filter Env → Filter(高め) |アタックに「ギャッ」とした質感|
|暗いテクスチャ |Osc B(低レート)→ Filter |不穏なうねり、ホラー的質感 |
|生成的変調 |Osc B → Freq A + Filter 同時|カオス的だが音楽的な動き |
## Prophet-5 V プリセット変換の手順
1. オシレーター設定(波形・チューニング・ミックス)
1. フィルター(カットオフ・レゾナンス — **Pro-800はレゾナンスをP5Vより控えめに**)
1. エンベロープ(**Attack/Decayを少し長めに**してステップ感を目立たなくする)
**ステップ2:Poly Modの意図を読み替える**
P5Vプリセットを見て「このPoly Modは本質的に何をやっているか」を理解し、Pro-800で到達可能な手段を選ぶ。パラメータ値の直訳は非推奨。
|P5V Poly Mod の機能 |Pro-800での代替 |
|----------------------|----------------------------------|
|Osc B → PW A(ボイスごとPWM)|LFO → PW A-B(近似。ボイスごとの揺らぎは不可) |
|Osc B → Freq A(FM) |Poly Mod Osc B → Freq A(ほぼ同等) |
|Filter Env → Filter |Poly Mod Filter Env → Filter(ほぼ同等)|
|Osc B → PW A で「生きた」質感 |Osc B → Freq Aで FM的倍音の動きを狙う方が効果的 |
**ステップ3:Pro-800の独自要素で仕上げる**
- 複数波形同時選択(Saw+Pulseなど)でP5にない倍音構造を追加
- P5Vプリセットのレゾナンス値をそのまま移さず、**Osc Bレベルを上げて**倍音の厚みを補う
ユニゾン(8ボイススタック) + フィルターエンベロープ短Decay + レゾナンスやや高め。エンベロープのステップ感がアタックに「ガリッ」とした質感を与え、ディストーションなしでも前に出る。
Osc BでOsc Aを低レートFM + フィルター絞り気味。Prophet-5では出しにくい不穏なテクスチャ。デトロイトテクノ、インダストリアル向き。
8ボイスユニゾンの分厚さはProphet-5(5ボイス)を超える。デジタル制御エンベロープの微妙なステップ感が加わり、研磨されすぎない「塊感」。
### 4. Saw+Pulse同時選択のアルペジオ
P5にもJunoにもない「厚いが輪郭がある」質感。Poly ModでFreq Aを変調するとステップごとに倍音バランスが微妙に揺らぐ。
### 5. シーケンス音色(Poly Mod併用)
シーケンス走行中にPoly Mod量をリアルタイム操作 → 同一パターンのキャラクターが連続変化。長尺のミニマルテクノに最適。
- **Carl Craig「At Les」**(Landcruising) — 暗く漂うパッドとアトモスフェリックテクスチャ。粒子の粗いパッドに600的質感
- **Innerzone Orchestra「Bug in the Bass Bin」** — ディープなベースライン上のシンセレイヤー
- **DAF / Nitzer Ebb** — EBM的ユニゾンリフ(ユニゾン+アルペジエーター+短Decay)
Z80 → DAC直書き(MIDI非経由)。外部MIDIより理論的にはレイテンシーが少ないが、Z80のスキャンレートも粗いため、独特のタイミング「訛り」が特徴。
#### シーケンス + Poly Mod 生成的パターン
シーケンスを走らせながらPoly Mod(Osc B → Filter)量をゆっくり動かす。Osc Bのピッチを半音単位で変えるだけでFM比率が変化し、パターン全体のキャラクターが劇的に変わる。
8ボイスユニゾンでアルペジエーター → 各ノートが極太モノシンセ的に刻まれる。速テンポ+短Decayフィルターエンベロープ → EBM/インダストリアル系リフ。
16ステップ全埋めせず意図的に抜く → フィルターエンベロープのリリースが聴こえる隙間 → グルーヴ。キック+ハイハットとの同期で「呼吸」を作る。
ラッチで和音保持 → 両手でCutoff / Resonance / Poly Mod Amountを同時操作。録音でも一発の演奏感が得られる。
Ableton/Reasonのアルペジエーターの方がパターン複雑性、確率、ノート長制御すべてで上。内蔵の価値は「DAWなしジャム」「セットアップ不要のラッチ演奏」「タイミングの訛り」に限定される。
外部MIDI入力は最大約1msの揺れが発生しうる。グリッド完全一致ではない独特の質感をメリットと捉えるかどうか。
DAWとMIDIクロック同期が基本。あえてPro-800をマスターにし、テンポノブで微妙に揺らすと、グリッド一致では出ない「人力的うねり」が得られる(ドラムマシンとの組み合わせで効果的)。
Pro-800の音色領域と、手持ちの各シンセが補完する領域を整理する。
|音色カテゴリ |Pro-800 |補完シンセ |補完の理由 |
|---------------|---------------|----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------|-------------------|
|**攻撃的ベース** |◎ ユニゾン8voice |**Moog Sirin** — Moogラダーフィルターの低域飽和感はPro-800と質が異なる。Pro-800が「ガリッ」ならSirinは「ズン」。レイヤーすると極太 |異なるフィルター特性の補完 |
|**ダークパッド** |◎ FM+フィルター絞り |**Serum 2** — ウェーブテーブルの微細な倍音変化でPro-800のアナログ粗さに異質なテクスチャを重ねる。WT Position自動化で長尺展開 |デジタル精密さとアナログ粗さの対比 |
|**アシッドベース** |△ フィルターの質が違う |**Korg Collection MS-20**(ソフト)または **MS-20 mini**(ハード) — レゾナンス時の歪み方がPro-800とは別物。MS-20のハイパスフィルターとの組み合わせでアシッド領域はMS-20が圧倒的|Pro-800にHPFがない弱点を補う|
|**クリーンなポリパッド** |× 不得意 |**Analog Lab 9** — Prophet-5 V / Juno / OB-Xaプリセットで洗練されたパッドをカバー。Pro-800の出番ではない領域 |そもそもP5 Vの担当領域 |
|**パーカッシブFM音** |○ Poly Mod FM |**Serum 2** — FMマトリクスが自由で、Pro-800のPoly Mod FMでは到達できない複雑な金属音が可能 |FM自由度の拡張 |
|**スクリーミングリード** |○ ユニゾン |**MS-20 mini** — パッチングでフィルターをセルフオシレーションさせた攻撃的リードはMS-20の独壇場。Pro-800ユニゾンリードとオクターブ違いで重ねると強烈 |セミモジュラーの過激さ |
|**サブベース** |△ 低域がやや散る |**Moog Sirin** — 低域の集中力・密度でMoogに勝てるシンセはない。40Hz以下のサブベースはSirin一択 |低域特化 |
|**シーケンス/アルペジオ**|◎ 内蔵Seq+アナログ揺らぎ|**Serum 2** — クリーンで正確なシーケンスが必要な場合。Pro-800と対比させてアナログ/デジタル2本立てのシーケンスを走らせる |正確性 vs 揺らぎの使い分け |
|**ノイズ/テクスチャ** |○ ノイズ+FM |**MS-20 mini** — ESP入力やパッチベイで外部音源加工。Pro-800の出力をMS-20に通すのも有効 |セミモジュラー加工 |
#### デトロイトテクノ — ディープベースライン
- **メイン:Pro-800** — ユニゾン4-6voice、Saw、フィルター絞り気味、Decay中程度
- **サブレイヤー:Moog Sirin** — 1オクターブ下、Saw、フィルター閉じ気味でサブ成分のみ
- **処理:** Abletonでサイドチェインコンプ(キックとの棲み分け)
- **メイン:Pro-800** — ユニゾン8voice、Saw+Pulse同時、短Decay、レゾナンス中
- **対旋律:MS-20 mini** — パッチベイでフィルター変調、スクリーミングなモノリード
- **処理:** 両方にビットクラッシャーやサチュレーション
#### アンビエント/シネマティック — ダークスケープ
- **背景:Pro-800** — Poly Mod(Osc B → Filter低レート)でゆっくり変化するダークパッド
- **上層:Serum 2** — ウェーブテーブルで微細に動くハイパッド、リバーブ深め
- **アクセント:Analog Lab 9** — Mellotronやストリングス系でシネマティックな層を追加
- **シーケンスA:Pro-800** — 内蔵シーケンサー、Poly Mod動かしながら生成的変化
- **シーケンスB:Serum 2** — Abletonシーケンサーでクリーンなデジタルシーケンス
- **ベース:Moog Sirin** — ルート音のみシンプルに支える
|-------------------------------|-----------------------------------------------------------------------------------|
|Pro-800 → MS-20 mini(Signal In)|MS-20のデュアルフィルター(HPF+LPF)でPro-800の音を再加工。特にHPFでローカットしてからLPFでスイープさせるとPro-800単体では不可能な質感|
|Pro-800 → Moog Sirin(Audio In) |Sirinのフィルターを通すことでMoogラダーの倍音付加。パッドやシーケンスに温かみと低域の密度を追加 |
|------------------|--------------------------|------------------------|
|ポリフォニックコード/パッド(洗練)|Prophet-5 V / Analog Lab 9|— |
|ポリフォニックパッド(ダーク/荒い)|**Pro-800** |Serum 2(WT) |
|極太ユニゾンベース |**Pro-800** |Moog Sirin |
|アシッドベース/リード |MS-20 mini |Korg Collection MS-20 |
|スクリーミングリード |MS-20 mini |**Pro-800**(ユニゾン) |
|ウォームモノリード |Moog Sirin |**Pro-800** |
|FM的パーカッション |**Pro-800**(Poly Mod) |Serum 2 |
|シーケンス(アナログ質感) |**Pro-800**(内蔵Seq) |MS-20 mini |
|シーケンス(正確/複雑) |Serum 2 / Reason |— |
|テクスチャ/ノイズスケープ |MS-20 mini |**Pro-800** + Serum 2 |
|プラック/ベル |Serum 2 |**Pro-800**(Poly Mod FM)|
*本ガイドはPro-800実機パネル確認に基づく。Poly ModデスティネーションはFreq AとFilterの2系統のみ、PWルーティングなし。*