マーチンギターHD28リペア ネックリセット ブリッジ剥がれ修理
70年代後半のマーチンHD28の修理をご用命いただきました。長期間あまり弾かずに保管されていたそうです。まず状態をチェックします。
この年代のピックガードはボディトップに直接貼り付けた後に塗装をする「塗り込みピックガード」です。素材の劣化により変形し剥がれています。幸いマーチンクラックはありません。
フレットの延長線はブリッジの真ん中ほど。ボディの膨らみ、ネックの反りが原因でしょう。この状態ではサドルを目いっぱい削っても弦高が高くなってしまうのでネックリセットします。
修理箇所が多いので順番を考えながら作業していきます。
ブリッジはヒーターを使い、熱で接着剤をやわらかくして金属製のヘラを差し込み一度完全に外します。ほとんど剥がれていたので綺麗に取り外せました。
70年代のマーチンギターはサドル位置がずれている個体が多くこのギターもそうでした。このまま同じ位置に再接着してサドル溝を一度埋めて正しい位置に切り直す方法も検討しましたが、弦穴とサドルが近くなりすぎてテンションがかかりすぎるのでブリッジごとサドル位置が正しくなるよう2.5mmほどボディエンド側にずらして貼り直すことにしました。
そのためにまずブリッジプレートの補修と弦穴を埋める作業をします。
専用の工具で弦穴の周囲を削り取ります。
削り取った部分にぴったりと合うパッチ板を接着します。
ブリッジが2.5mmほど移動するので新しい接着位置に合わせてタッチアップします。同時にピックガードの貼ってあった部分も未塗装なのでラッカーを塗っておきます。
ボディトップとブリッジがしっかりと密着するように加工し接着します。
続いてネックを外します。指板の14フレット以降をあらかじめヒーターとヘラで剥がしておきます。
15フレットを抜きスチームを入れるための穴をあけます。
スチームを入れ接着剤をやわらかくしてネックを外します。スクエアネックなのでトラスロッドがありません。
ネックのセット角度が適正になるようにネックエンドを削ります。
角度を合わせるとダブテイルジョイントの嵌め合いが緩くなりますのでマホガニーの薄板をホゾに貼り付けてからホゾを削り直します。ボディ側にチョークを塗ってネックを差し込むと密着している部分にだけチョークが付くので、それを目安に全体が密着するよう少しずつ削っていきます。
今回はボディの膨らみもあり、きつめのセット角度となりました。そのままでは指板下に隙間ができてしまうのでエボニー材でテーパー状のシムを製作します。
ネックが落ち着くのを待つ間に、その他の修理を進めます。裏板のブレーシングは4本とも剥がれていました。接着剤を注入しジャッキとクランプを使い再接着します。
下地はラッカーで簡単に塗装してありますので新しいピックガードは両面テープで貼り付けます。エッジを面取りし塗り込み風にしています。
次にフレット交換を行います。すり合わせのみでの修理も考えたのですがネックに順反りがありトラスロッド調整の出来ないSQネックなのでフレットを抜いて指板を削り調整することにしました。
新しいフレットを打ちます。弦のテンションでネックが動くことを想定しての作業です。
1弦2.0mm、6弦2.5mmの標準的なセッティングでサドルに適度な弦圧がかかる状態です。音程もしっかり合ってます。
修理完了です。製造から約40年が経過していますが安心して弾ける状態になりました。HD28ならではの煌びやかなマーチンサウンドでお客様にも喜んでいただけました。