僕らのバンドも、自分たちのバンドがどれだけ幸運だったのかよく分かっている。マネージャーのブライアン、クリス、ブライス、ジュールズのおかげだ。彼らは僕たちのために本当に必死で戦ってくれたから。それから不思議なことに、昔のレコード会社、古き良き時代のEMIも、僕らにかなり自由を与えてくれた。それが全部、ちゃんと報われたんだ。 でも一方で、運に恵まれず、業界に噛み砕かれて、吐き捨てられたアーティストたちも、僕らはたくさん見てきた。 アーティストが自分の声を見つけには時間がかかる。技術を磨き、それがどこに向かうのか知るにも時間がかかる。だけどそんな時こそ、すごいものが生まれるんだ。 でも今の業界は、リスクを恐れ、誰かを支える力を失いつつある気がしてならない。それが僕には全く理解できない。しかも、それは音楽業界だけの話ではなくて、アートも映画も演劇も、あらゆるクリエティブな産業が、この近視眼的な自己破壊見たいな状態に陥っている。 そんな中で、僕が『ファイナシャル・タイムス』を開くと、そこにはストリーミング企業の株価がどれだけ素晴らしいかとか、全世代の一部のアーティストたちのカタログにどれだけ狂った価格がついているのかとか、金融狂騒の話ばかりが載っている。 それは彼らにとっては良い話なのかもしれない。でもそれは、彼らがいうところの、音楽業界への投資、なんかじゃない。むしろその真逆だ。僕は思う。そういう連中は、そのレコードが作られるまでに一体何があったのか理解しているんだろうか?と。自分たちが買い漁っている囲い込んでいる音楽伝記を読んでみればいい。あの時代に何があったのか。そして、その歴史も。 なぜ誰も、この狂った金の上流への流れに、疑問を持たないのか? 僕にはそれが理解できない。そのせいで、新しいアーティストたちには、クズしか残らないのに。 業界のトップ連中は、音楽の井戸が枯れた時に、次の世代などうなるのか、なんて考えちゃいない。いや、絶対に枯れるんだよ、お前ら。 その代わりに、かなりの連中が、新しい音楽を支援しているフリだけはする。自己満足なプレイリストを並べて、音楽シーンが活気に満ちているみたいな顔をしている。それなのに、大多数のミュージシャンに、持続可能な収入源のかけらすら与えようとしない。しかも、90年代のメジャーレーベルがやっていたような、あのクソみたいに不透明な会計トリックを今も続けている。 だから僕は、業界のトップとストリーミングサービスに、ひとつだけ言っておきたい。 しっかりしろ。 お前らは、次のおいしいバックカタログをどこから手に入れるつもりなんだ? 次世代のアーティストと、そのファンの価値をひたすら下げ続けるだけなら、この業界はいずれ終わる。お前らクソ野郎ども一緒にな。 覚えておけ。僕らがいなかったら、お前たちなんて何の価値もない。
トム・ヨーク、受賞式で音楽業界役員とストリーミングを痛烈批判。「僕らがいなかったら、お前たちなんて何の価値もない」。新曲披露、ニルヴァーナ、ソロ作についても語る (2026/05/25) 中村明美の「ニューヨーク通信」 |音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)














