贈り物
交際しているdarnlexの短い話
トロールトピアの大陸と海、テクノ・リーフと近い海岸にある入り江、子どものトロールがひとくち齧ったような地形、周りを丘に囲まれた小さなビーチがキング・トロレックスとプリンス・Dの逢瀬の場だった。 「君のアクセサリーって素敵だね」 穏やかな波の音を背景にいつものようにお互いの音楽や文化について話していたところ、トロレックスはそう言った。 ダーネルは首に、耳に様々な金の装飾品を付けている。どれも彼のお気に入りであり、自分に似合うものばかりこだわり抜いたアクセサリーだ。 その煌びやかなゴールドの飾りはハンサムなダーネルの姿にも性格にもよく合っていた──トロレックスが見惚れるほどに。 「ありがとう……そうだ、予備があったはず」 トロレックスの言葉を受けて閃いたダーネルは自分が乗ってきたレコードがあしらわれた小型船の収納を漁った。王は海にひれを浸し、ぴちゃぴちゃと水をかき混ぜながら待つ。 「プレゼントするよ、君にも似合いそうだ」 小さな収納部内に詰め込まれた小物たちの中からDはようやく目当てのものを見つけた。 跪いて波打ち際の王にプレゼントを見せる。 差し出したのは彼の耳に付いているものと同じ星型のイヤリング。黄金の耳飾りは太陽の光を受けてきらりと光った。 「それって大切なものじゃないの?」 「うん、でもたまに失くすからいくつか持ってるんだ。付けてもいい?」 ハンサムな恋人の申し出にトロレックスは素直に頷く。頬が熱いのは照りつける日差しのせいだけじゃない。自然と瞼を閉じ、耳に触れる恋人の手と波の音を感じる。 「やっぱりトロレックスには金が似合うね、きれいだ」 「本当? 嬉しいよ、ありがとう」 トロレックスは瞼を開き、自分の左耳に手を当ててイヤリングに触れた。星の形をなぞり、今ここに鏡があればいいのにと思う。恋人と同じイヤリングをした自分を想像してくすぐったい気持ちで胸が高鳴る。 「お返しに、ダーネルにシュシュを付けていい?」 思いついたトロレックスは、自分の髪を束ねていたシュシュを外して聞く。髪留めを解き風が蛍光色の髪をなびかせた。 「光栄です、わが王」 恋人からのチャーミングな申し出にダーネルは愛を込めつつ、おどけた口調で返事をする。風に揺れる王の髪はまじめに受け取るには眩すぎた。 「とてもお似合いです、殿下」 ダーネルの調子に合わせトロレックスもへりくだった態度を取ってみせるが、すぐに笑みがこぼれた。王子のドレッドに紫色のシュシュが結んであるのは普段のクールな印象からは外れている。しかし、そのミスマッチさもダーネルの魅力を引き立てていた。 「ありがとう、君だと思って大切にするよ」 自分の姿を確認しなくても、似合っていても、似合っていなくと愛しい人からの贈り物は嬉しかった。 波の音のはざまにふたりの唇が重なる。今はお互いの鼓動と潮騒が音楽だ。
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「トロレックス王、その……そのイヤリングはもしかして?」 テクノ・リーフに戻った王を出迎えたボタンくんは、すぐに左耳のイヤリングに気づき聞いた。 「これは、ダーネルからのプレゼント。僕からも彼へ髪飾りを贈ったんだ」 「それは、それは……似合ってますね」 幸せそうな王に臣下かつ相棒のボタンは言葉を濁した。 テクノ・トロールの王とファンク・トロールの王子が交際しているのは周知の事実。隠すことなく公表され、お互いのトロールたちはふたりを祝福している、が――パーティー好きで先走りがちなトロールズがトロレックスの耳にダーネルのイヤリングを見つけたら婚約したと騒ぎ立てるに違いない。 ふたりの仲睦まじい様子を知っているボタンくんとしては、いつ婚約してもおかしくないと思っているものの周りが勝手に囃し立ててカップルを気まずくさせてほしくない。ふたりのペースで交際してほしかった。 特に、ポップ・トロールの姫、ポピーの早とちりと行動力は凄まじい。彼女には知られてはならない。 ボタンくんは大切な王のため、今日も東奔西走する。












