cribas interview
アルゼンチンでのコトリンゴ との2018年の奇跡の邂逅を経て2年…いよいよアルゼンチン音楽新世代の5人クリバスが日本の地に集結します。2016年に月刊ラティーナに掲載されたインタビュー記事を特別に公開します。
モダンフォルクローレと 現代ミナス派の邂逅
ブエノスアイレスから南東約50kmにある州都ラ・プラタ。大聖堂を中心に格子状に設計された街並みはブエノスアイレスに比べ閑静な印象を受ける。
そのラ・プラタから現れたまだ無名なこのグループからは、カルロス・アギーレ、アカ・セカ・トリオ、ルス・デ・アグアといったアルゼンチンのモダンフォルクローレのサウンドと、ハファエル・マルチニやアントニオ・ロウレイロといった、ジャズやクラシックをバックボーンに持つブラジルの現代ミナス派と呼ばれるようなサウンドの両方を聴くことができるように思う。
メンバーは皆若く最年少は19歳だというが、高度に洗練された彼らの音楽は聴くものを驚きとともに強く魅了するだろう。そして現在23歳でグループの中心人物であるフアン・フェルミン・フェラリスにグループの成り立ちや、影響を受けた音楽について話を聞くことができた。
ーー まずグループについて教えてください。
フェルミン・フェラリス(以下F) メンバーはホアキン・メンディ(ドラムとパーカッション)、ニコラス・パディン(ギター)、バレンティノ・サンパオリ(コントラバス)、フアン・フェルミン・フェラリス (作詞作曲、ピアノと歌)、フアン・クルス・セラサ(クラリネットとバスクラリネット)の五人でしたが、我々のクラリネット奏者が多忙のため参加できていないので、フェデリコ・アギーレ(アコーディオン)を新たに第五のメンバーとして迎えました。
全員ラ・プラタで生まれ、今も住んでいます。彼らとは小さい頃からの友人で、学校も遊びも音楽も何もかもを共にしていたので、グループを結成するのは自然な流れでした。それぞれ音楽学校へ行ったり、個人で先生に習ったりしていますが、友人同士で演奏することも成長のための大事な要素になったと思います。
ーー ラ・プラタの音楽家ではフェデリコ・アレセイゴルやハビエル・アルビンなどが日本でも知られていますが、彼らと何か交流はあるのでしょうか?
F フェデリコ・アレセイゴルはラ・プラタ国立大学の芸術学部の教授で、私の大学時代の先生でした。授業を受けていたマエストロ達の中でも特に重要な一人だったと感じています。彼の音楽は計り知れないほど素晴らしいです。
その大学からは多くの音楽家が巣立っています。アカ・セカ・トリオもかつてそこで学ぶうちに知り合い、グループを結成しましたから。
ーー クリバスという言葉にモノ・フォンタナのアルバムをイメージするのですが、実際には何を表す言葉でしょうか?
F クリバスという名前は、彼のアルバム『クリバス』に無関係ではないと言えます。偉大なマエストロを最初はスピネッタのキーボーディストとして知りましたが、彼自身の作品を含めて影響を受けましたから。とはいえ我々は本当に多くの音楽から影響を受けています。
クリバスという言葉はスペイン語で「ふるい(篩)」を意味します。ふるいにかけるプロセス、歌に直面している間の、個人としてだけでなく、五人のフィルターを同時に通ること。それは想像と挑戦の時間です。手持ちのアイデアを捨て、計算がなくなるまで行い、歌が必要とするテクスチュアを構築します。調和のために。この編曲のプロセスは全面的に我々の記憶や好きなもの、日々聴いている音楽や感情的なことと結び付いています。作曲と編曲は、ただ我々を取り囲んだ鏡なのです。
ーー アルバムのタイトルは何を意味していますか?またこのアルバムはあなたにとってどういうものでしたか?
F 『La Hora Diminuta(とても小さい時間)』というのは「時間の存在しない瞬間」を意味します。我々がリハーサルをするのは決まって午後の、街が静寂に包まれる時間帯でした。アルバムのジャケットは夕暮れを前に屋外で演奏するときに感じる、ある瞬間の空気感のようなものがにじみ出るようにしました。曲の中でもそういった空気感が伝えられれば嬉しいです。
ーー あなたが先日ラ・プラタでハファエル・マルチニと共演したと聞きましたが、彼との共演はどうでしたか?それから現代ミナスの音楽についてどう思いますか?
F それらの問いはより個人的なものです。グループとして共演したわけではないので、クリバスとして答えることはできませんが、主催者の一人として彼の音楽をラ・プラタに紹介できたことを喜ばしく思いますし、とても美しいものを彼と共有することができたと思います。『モチーヴォ』という彼の最初のアルバムが、自分の中に記憶として残っています。それは私にとって非常に重要な題材です。彼の音楽を聴けば放っておくことはできません。
私は「ミナスの音楽」と意識してはいませんでしたが、ブラジルの音楽は多いに楽しんで聴いています。彼らの作品に触れてから、作曲と編曲は明確に変わりました。
最初に知ったのはエルメート・パスコアールとエグベルト・ジスモンチで、その後にアンドレ・マルケス、レア・フレイリ、セルジオ・サントス、アントニオ・ロウレイロ、ハファエル・マルチニらを知りました。個人的にレア・フレイリとアンドレ・マルケスの講義とコンサートに参加できたことは、即興、作曲、編曲の観点でとても重要な経験でした。
現代は新しい音楽家たちを探すことが非常に簡単になりました。コミュニケーションメディアはすばらしいツールです。他の方法では知ることができなかった多くの音楽家を知ることができるのですから。音楽はすでに国境を越えて、普遍的で無限の存在であると感じます。 ----
kotringo & Cribas Japan Tour 2020
2月23日(日)豊洲シビックホール(東京)
2月26日(水)sonorium(東京、永福町)CRIBASソロライヴ 2月28日(金) 三楽座(名古屋) 2月29日(土)蔭凉寺 (岡山) 3月1日(日)興雲閣(松江) 3月4日(木)ビルボード大阪
CRIBAS(クリバス)
アルゼンチンフォルクローレ、ジャズ、ラテンアメリカ音楽、室内楽など多様な要素を含んだ五重奏。2014年『La hora diminuta』をリリースしてデビュー。そのみずみずしいアコースティックなサウンドはカルロス・アギーレやアカ・セカ・トリオに次ぐアルゼンチン音楽の新世代の到来を日本のアルゼンチン音楽ファンに堂々と告げた。2017年にはセカンドアルバム『Las Cosas』を発表し、重厚かつ柔らかなアンサンブルはさらなる進化を遂げた。日本とのつながりも深く、フアン・フェルミン・フェラリス(ピアノ)による月刊ラティーナ誌への寄稿や、2018年にはアルゼンチンツアーを行ったコトリンゴとの共演を果たした新進気鋭の若手アンサンブル。2020年には新作となる『La Ofrenda(ラ・オフレンダ)』をリリース。コトリンゴ との日本ツアーでお披露目予定。
来日メンバー
フアン・フェルミン・フェラリス Juan Fermín Ferraris (ピアノ・ヴォーカル)
ニコラス・パディンNicolas Padin(ギター)
ディエゴ・アメリセDiego Amerise(コントラバス)
フェデリコ・アギーレFederico Aguirre (アコーディオン)
ホアキン・メンディJoaquín Mendy(ドラム、パーカッション)
ディスコグラフィー
2014年 La hora diminuta(ラ・オラ・ディミヌータ)
2017年 Las Cosas(ラス・コサス)
2020年La Ofrenda(ラ・オフレンダ)
text by TAKESHI MIYAMOTO (月刊ラティーナ 2016年1月号掲載)















