美大でのセクハラの記憶5
<留学して見えたモヤモヤの正体>
その後、私はニューヨークのアート系の大学院に留学しました。
留学は、「恵まれた人」と思われがちで、実際、私は親に留学資金を援助してもらっていたので確かに経済的にはとても恵まれていました。しかし、同時に私としては「日本で頑張ってみたけれど、自分の能力を活かせそうな場所がどこにも見つからなかった。日本では、私のアートを評価する仕組みはなく、私が女としてどれだけ売れるかでしか評価されない」と感じていました。
留学してみると、私と同じように感じて、日本を泣く泣く出た女性がたくさんいました。
私は、留学前に日本で「ただでさえ童顔だから、アメリカではきっと子供としか扱われないよ」とよく言われました。でも、実際には、アメリカの大学のみんなは、私を一人の自立したアーティストとしてリスペクトを持って接してくれました。意見を尊重してもらい、失礼なことを言われないことが、こんなにも毎日を豊かにしてくれるのだと驚きました。 大学には、人の見た目についてネガティブなコメントをすることは受け入れない、という、日本とは逆の空気がありました。 アメリカでは、大学の先生が生徒に恋愛をほのめかした電話をしたりすることは違法で、そのようなことが発覚すると先生はクビになることを知りました。 フェミニズムやクィア・アート、マイノリティー(有色人種や移民など)・アートについての授業があり、多くの学生が社会に蔓延する差別についての知識がありました。 そういう経験から、私はだんだんと、日本の大学では性差別的な文化とセクハラ被害が蔓延しており、自分がその環境に毎日強いストレスを感じていたことがわかってきました。言葉にならなかったモヤモヤの正体が、だんだんわかってきたような感じでした。
(Salisbury University Gallery, PROTEST ART OF THE 2017 WOMEN’S MARCHES) 一方で、ニューヨークでもセクハラはありました。
語学学校で、、、
語学学校に通う頃、友人の彼氏にレイプされて警察に届けたことがありました。 (海外でレイプと認められても日本でレイプと認められないケースが多々あります。私の場合は日本の法律ではおそらくレイプと認められない事件でしたが、アメリカではレイプ事件と扱われて警察を含め誰もが支えてくれ、セカンドレイプなどの二次被害を逃れることができました。 参考記事: 「性犯罪を受けた被害者はサポートされる権利がある」イギリスの国家的な取り組みとは? 「それはレイプではなかった」と言われて。19歳だった女性は検察に絶望した)
日本人男性が「アメリカ人の女は自己主張が強くて嫌いだ。日本人女性が従順で一番」と言うのを日常的に聞きました。
大学で、、、
大学で日本人の男子留学生が、女子トイレを覗いて退学になる事件がありました。(彼は即日退学となりました)
アート界で、、、
作品を買ってくれた年配男性のコレクターに、執拗に食事に誘われ、別れ際にお尻を触られました。
チェルシーの有名な年配男性ギャラリストの一人が、女性作家たちをディナーに招待し、隣に座る女性作家の太ももを撫でる様子を見ました。
私は、アート業界は世界的にもセクハラに対する意識が低く、対応が遅れていることを知りました。 そして、美術館館長、キュレーター、ギャラリストやコレクター、有名作家のほとんどが男性で、マイノリティー(有色人種や移民、女性、性的少数者など)たちはシステマチックにレースから外されていることも知りました。
そして、#metooの流れもあって、2017年に「もう、アート界のセクハラを終わらせよう!」と、ニューヨークのアート業界の女性たちが団結して #私たちは驚きません (#notsurprised) のムーブメントが始まりました。
日本でも外国でも、ほとんどの人は、セクハラの直接の加害者ではありません。でも、周りの人が、そのセクハラを見て見ぬ振りをしていると、結局はその加害者側を助けることになってしまいます。
これまで、セクハラが当たり前で、驚けなくなっている私たち。でも、そんな文化は、もう終わりにしよう!
<匿名での#metooのススメ>
もし、あなたも#metooをしようと思っていたら、#metooは匿名でもできることをお伝えしたいと思います。
実際に、欧米でも、実名で#metooをしているのはキャリアがあったり、年齢が上で生活が安定していることが多く、アート業界で働く女性のような不安定で社会的立場の弱い人や、年齢の若い女性の#metooは匿名が多いものです。この記事で紹介した、#私たちは驚きません の公式書簡を書いた団体WANも、ゲリラガールズも匿名団体です。
日本では、実名でないと「正々堂々としていない」「信用できない」と言われ、弱い立場にいる人の匿名の声への風当たりは強いものです。
でも、例えば、ストーカー被害にあっていたり、DV被害にあっていたり、#metooがバレると仕事がなくなることがわかっているような状況で、実名で声をあげることなど非常に難しいのです。だからこそ、弱者に実名での#metooを強要するのではなく、社会が匿名の小さな声を聞く姿勢を持つよう変わらなければいけないと思います。
あなたのストーリーには力があります。一緒に声をあげましょう! <参考> 明日少女隊は、なぜ実名を出して活動しないのか?














