少し遅れているトマトの支柱を立てています。夏野菜は立体的に育つものが多いので支柱を使うものがいくつかあります。ひとつ立つごとに畑の雰囲気がどんどんと変わっていきます。
同じ畑でも、どの野菜をどこに植えるかによって毎年違う風景になるので、それも色々な種類の野菜を育てることの楽しみの一つです。
また、夏野菜は実がなるものが多いので、トマトやオクラ、かぼちゃやきゅうりなどの瓜類…と、自家採種がわりと簡単にできるものがいくつもあります。
「自家採種」とは育てた作物から次の年に播くための種を採ること。
自然農野菜一草でも、夏野菜に限らず年間を通していろいろな野菜の種を自家採種しています。
今、その自家採種のことでとても危惧していることがあります。
「種苗法」という法律の改正案が現在国会で審議されています。種苗法を改正する理由としては、表向きは国内の優良な農作物の品種を海外に流出させないためといわれていますが、実際には農家が作物を自家増殖(採種)するのを原則禁止するのが目的だとも言われています。
極端に言えば、毎年農家は種を種苗企業から購入し続けないといけないことになってしまいます。
そしてその種苗会社が固定種や在来種の種子を販売せず、遺伝子組み換えの種子のみで、しかもこれまでより高額な種しか販売していなくても、市場が独占されれば農家はそれを買うしかなくなる可能性もゼロではないということです。
実際にインドではグローバル企業に種子の市場を独占され、こういうことが起こり、農家が悲鳴をあげていると聞きます。
自家採種が許されず、全ての種を毎年購入しなければならないとなると、金銭的な苦しさは確かにあります。ただ、それだけではありません。
種は同じ場所で育てて自家採種を繰り返していくことで、毎年少しずつその土地の風土に馴染んでいくと言われます。
一年目は虫食いが多かったけど年を重ねるごとに虫食いにも強くなる、というように。
それが自家採種をする農家にとっての喜びであり、やりがいであり、少し大げさな言い方をすれば生きていくうえでの大きな安心感を感じることでもあります。
そんな、農家にとって根源的で重要な仕事である自家採種が禁止されるかもしれない法案を通してしまおうとする人たちのことを、一農家として全く理解できません。
農業だけに関係している専門的な問題だと思われるかもしれませんが、農作物を食べて生きている人すべてに関わってくる重要なことのはずです。
いろいろな意見や解釈の仕方があり、簡単ではない問題ですが、自分も含め一人でも多くの人がこのことについてよく知り、考えて、そして時には声を上げることが大切だと思っています。