マーチンネックリセット Martin 000-28ec マーティンギターリペア
マーチンギター000-28ecエリッククラプトンモデルを修理お預かりいたしました。
弦高が1弦3.0mm、6弦3.6mmと高めですがサドルには余裕がなく、ネックをチェックしてみるとボディジョイント部から起き上がるいわゆる「ネック元起き」の状態でした。 そのほかにもバインディングの剥がれ等もあり、合わせてリペアを行いました。
フレットの頭の延長線がブリッジのちょうど上あたりに来るのが適正なネックセット角度ですが定規を当て計測するとブリッジに当たってしまいます。
元起きもひどく、ヒール浮きも発生していましたのでネックジョイントに問題があると判断しネックリセットをして修理します。
14フレット以降の指板をヒーターで熱し、接着剤を軟化させボディトップから剥がします。
15フレットを抜いたところに穴をあけそこから蒸気を送り込み接着剤を軟化させネックを外します。
ネックが外れました。数日乾かしてからボディ、ネックともに接着面を綺麗にします。
ネックセット角度、センターラインが適切になるようにボディとの接地面を削り調整していきます。
このような台形の接合方法を日本では蟻継ぎと呼び、英語では鳩のしっぽの形に似ていることからダブテイル(dovetail)ジョイントと呼びます。マーチンは伝統的にこの手法を使っていますがこのギターに関してはボディ側とネック側でダブテイルの角度が違い、面ではなく線で接着しているような状態でした。大量生産ではこのくらいの精度が限界なのでしょうか。特にマーチンの場合、加工の順番が ①ネックと指板を接着 ②ネックとボディを別々に塗装 ③ネックとボディを接着 という順番なので高い密着度のジョイントに加工するのはかなり難しいと思います。
いっそテイラーギターの様なネジを使ったボルトオンジョイントの方が大量生産での精度は安定しやすいと思います。
このままではジョイントが緩いのでマホガニーの薄板(シム)を接着します。ダブテイルの角度を合わせるため片側が厚いシムを製作しました。
ここからチョークフィッティングと呼ばれる方法でジョイントのはめ込み具合を調整します。ボディ側の溝にチョークを塗りネックをはめ込むと接触する部分だけにチョークが付きます。次にそのチョークのついたところだけを削ります。
これを何度も繰り返し最終的に全体が密着するようなったらいよいよ接着します。
接着剤の乾燥後、15フレットにあけた穴を埋めフレットを打ち込みます。ネックリセット工程で熱やスチームを使用していますので簡単にフレットのすり合わせをします。
新たにサドルを作り弦高を1弦2.0mm、6弦2.5mmに調整します。フレットの延長線はブリッジの1mmほど上にきておりサドルの高さも適正になりました。これによって弦がサドルを押さえつける力が増え、弦振動がよりボディに伝わりやすくなります。
ナットも弦がかなり埋まっていたので上面を削り整形しました。
ネックリセットと並行してボディバックのバインディング剥がれ修理も行います。 バインディング素材が縮みクビレの部分に剥がれがあります。
縮んだ分、長さが足りなくなりそのままでは貼り付けることができないので一度ネック側までバインディングを外します。塗膜をなるべく割らないようにカミソリの刃で塗膜を切りながら慎重に作業します。
接着します。接着剤は塗膜を侵さないタイトボンドⅢを使用しています。
縮みの分だけ隙間ができますのでおなじアイボロイド柄のセルで埋めます。塗装が日焼けして飴色になっていますのでこのあとタッチアップして色味を合わせます。
続いてピックアップも取り付けます。ベースドラムのいるバンド等での使用は想定していないとの事なのでコンデンサーマイクでより生音に近い音の出るL.R.Baggs Lyricを選択しました。 000の場合、ギターによってはこのようにブリッジプレートのボディエンド側にマイクをセットします。音質的にもPA機器でしっかりとチェックして位置決めしてますので特に問題ありません。
サウンドホール縁にボリュームコントローラーをつけます。
これですべての作業が完了しました。弦振動の伝わりが良くなり、ダブテイルジョイントの密着度も上がっていますので生音の改善が実感できます。000特有の5弦開放A音がとても気持ち良いです。このたびはご用命ありがとうございました。













