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Akira the Hustler
2023
https://youtu.be/W_jJMp2_uac
Interview: Akira the Hustler |

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2.16 Sun |クリフサイド
TPAM ディレクション|コ・ジュヨン ディレクション
香港、日本、韓国の状況を注視しながら、こういう世界で舞台芸術は、芸術は、何であるべきかと問うことは依然として難しい。 一人の個人、社会を生きている市民、プロデューサーという職業、この 3 つのアイデンティティを結びつけることの困難の中で、 今は舞台芸術とそうでないもの、アートとそうでないもの、演劇・劇場とそうでないものの境に身を置きたいと思っています。
ジェンダー規範を揺さぶる振付家でプロのパフォーマーの毛魚モア、美術作家/パフォーマー/アクティビストのアキラ・ザ・ ハスラー。この 2 人は日韓の国籍を持ちながらマイノリティとして友情を育んできました。捩子ぴじんは、決して声を荒げる アーティストではありませんが、その存在だけで本質的な質問を投げかけてくる哲学的な力をもった不思議なアーティストで す。コラボレーターの梅田哲也はその力を最大限に拡張してくれるはずです。始まったばかりの 2 つのクリエーションが、「終 戦」の翌年にオープンしたダンスホールの時空間を、この世界のどこかへとつなげてくれることを願っています。
ねじロール
捩子ぴじん(京都)× 梅田哲也(大阪)
捩子ぴじんと梅田哲也はヨコハマ国際映像祭 2009 オープニングで上演された『停電 EXPO』をきっかけに親交を深め、過去何 度となく共演している。今回の共演は捩子が梅田に出演をオファーし実現した。出演にあたり、捩子が梅田に依頼したのは「見 ても見なくてもいいダンス」の振付である。
それは見るに耐えないダンスではない。そしてもちろん、目が離せないダンスでもない。見てもいいし、見なくてもいいのである。 やっていればいい。踊っていればいいのである。
2020 年が明けてすぐ、会場の下見に訪れた捩子と梅田は、クリフサイドの建物と、建物が立つ山手地区の風景に触発されて 様々なアイディアを思考した。結果、梅田が捩子に提案したのは、耳慣れた日本語のフレーズに当てはめれば“〇〇〇やろうぜ” である。
〇〇〇は、建物が呼吸する際に放出するエネルギーが、地球の中心に向けて渦を巻きながら大地に穴を穿つイメージにより“ねじロール”と名付けられた。
オギヨディオラ
隣国の日本と韓国は 1900 年代の支配/被支配の関係を解決しておらず、そこから続いている様々なトラブルが今も起っている。 経済から始まり、政治、外交、国民感情に至るまで、昨年から再び激しくなってきている両国の対立を解く手がかりは、どこ にあるのだろうか。
このパフォーマンスは、
・バレエのプロの韓国のドラッグからバレエを習う日本のドラッグ「○○を教わりましょう」
・一つの大きな船にみんなで乗るという全体主義的発想ではなく、個なら個として、頼りなくとも一つ一つのボートに乗って声を掛け合 いながら進もうと歌う「二艘のボート」
・両国が共有している海なのに違う名前で呼ばれることへの違和感から、それぞれの立場から眺める一つの海を描く「海を塗り替える」の 3 ピースを中心に繰り広げられる。
タイトルの『オギヨディオラ』は、韓国語で船頭が船を漕ぐときのかけ声。90 年代に両国で活躍していた韓国のミュージシャン、 リーチェ(Lee-tzche)の曲で、日本でリリースされた英語バージョンは日本映画『がんばっていきまっしょい』にも挿入され た。今回の上演では韓国語バージョンが使われる。
- ____________
東京で頻繁に起き出した在日や韓国から来る人々に向けられたヘイトデモへのカウンターに出掛けるようになって数年、ひょ んなことでソウルのクィア達がキリスト教右派の攻撃にあってることを知って、初めてソウルのクィアパレードを訪れた。
以来、増えていくソウルの友人達は、東京で政権の間違った方向や歴史修正主義に抗う僕らに声援を送ってくれるようになった。 互いのプライドパレードを行き来する機会も増えた。
日本の政治や社会の状況と対峙しながら、嘆息とともに思いだされることは、百年前もこうだったのだろうなということだ。 現在を戦うことは過去との戦いでもあるのだろう。
片方の手でそれらと戦うことがあって初めて、もう片方の手で共に開く未来もあるのだろうなと思っている。 それぞれで、そして共に。 僕たちはそれぞれの吹けば飛ぶような小舟を沈まぬように四苦八苦しながら、時には同じ虹を追いかけるのだ。 (アキラ・ザ・ハスラー)
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オギヨディオラ
黒く透きとおった あなたの瞳
額を伝う 汗のしずく
私の背中は 虹の上 種をまいてみようか
陽はのぼり 沈む 月ものぼり沈む
流れ流れて どこに行くのやら
陽はのぼり 沈む月ものぼり沈む
その天球を 漕ぎ渡ってゆく
オギヨディオラ オギヨディオラ
動きをとめた風 雨もあがった
さあさあ 船をこげ
天空の星も 大地の花も
ひそやかに わが道を 生きてゆくように
ふと気がつけば河が微笑みかけている
私たちも 微笑みがこぼれる
捨てて 捨てて 忘れて 忘れて
風が動きはじめる 雨がおちてくる
さあさあ 舟をこげ
風が動きをとめる 雨もあがる
さあさあ 舟をこげ
オギヨディオラ オギヨディオラ
作詞・作曲:リーチェ
和訳:姜信子
- ____________
峰
人々は手を上げ高く指す
高くて尖った峰だけを選んで
私が前に登ってみた小さな峰の話をしようか
今はただ
とても小さな丘に過ぎないけど
それでも その時
それより大きな山があるとは 考えもしなかった 私には それが全てだったから...
ひとりぼっちだった
私は自分の知っている 一番高い峰に登っていったんだ
高く登りすぎただろうか?
遠く離れすぎただろうか?
あと少しなのに
忘れよう!
とりあえず 何も考えず登ってみよう
峰に登って手を振るんだ
声も張り上げながら
今の苦労は何ものでもないさ
一番高い峰に登ったら ぐっすり昼寝をするんだから
しかし 私が登ったのはただの峠道なだけ
山道はまだ峰へと続く
折れた木の切り株に腰を掛け
私は見たんだ
低い通りにだけ流れて溜まった海
小さな舟たちが 煙を吹きながら行き
おーい 先に峠に登ったとしても
振り返って叫んだり
手を振ったりしなくていいよ
風にはためく君の服の裾を
私は遠くからも はっきり見極められるから
また わけもなく寂しがりながら
座り込んで 汗拭いたりはしないで
汗くらい 通り過ぎる風が 冷ましてくれるよ
たまたま 痛みのようなものが 染み込んできたら その時は 海のことを考えて
海!
峰とは ただ越えてゆく峠道の通過点にすぎないと
だから友よ
私たちが登る峰は すぐ今のここかもしれないよ 私たちが汗流しながら行く ここ森の狭い道
高いところに 峰はないかもしれない
そう友よ たった今、この地点かもしれない
私たちが登る峰は
作詞・作曲:キム・ミンギ
訳:アキラ・ザ・ハスラー
毛魚(ソウル)× アキラ・ザ・ハスラー(東京)
出演:捩子ぴじん、梅田哲也、溝口紘美(ナンシー)、毛魚、アキラ・ザ・ハスラー
-舞台監督:河内崇
記録:島崎ろでぃー(写真)、渡邉寿岳(映像)
国境がまだ閉じられていなかった2月16日、横浜の老舗のホールでソウルのドラッグ・クィーン、MOREさんとプロデューサーのコ・ジュヨンさんと一緒に作ったパフォーマンスのレビュー。正確に意図を汲んでいただいていて、うれしい。本当に本当に光栄だ。
국경이 아직 닫히지 않은 2월 16일 서울의 드래그 퀸, MORE와 프로듀서 고주영 씨와 같이 만든 공연의 리뷰.정확하게 의도를 길어 주시고 있고 기뻐서 눈물이 나온다.
http://choomin.sfac.or.kr/zoom/zoom_view.asp?type=OUT&zom_idx=514&div=03
어여어여 노를 젓네
去る2月9日から16日まで、日本の横浜に宿泊しながらTPAM2020(Performing Arts Meeting in Yokohama 2020)参加公演の数々を見ることが出来るという「あまり見慣れない」機会が与えられた。
公演観覧することを目的に海外に出て行ったことも、1日に一回以上の公演を毎日見ることも私には全て初めてのことだった。
不慣れなことだったので、普段よりも公演を見ることにより集中しようと努力した。しかし、目を閉じれば韓国で片付けられない数々の仕事と帰ってからやらねばならない仕事たちが頭の中でぐるぐる回り、インターネットで触れる韓国の事件とニュースは韓国にいる時よりもずっと大きく迫って来た。
その渦中に解決することができない悩みに向き合っている友人の日常が心配でもあった。そして、当時横浜にはコロナ19ウィルス感染の拡散防止を理由に3700余名の乗客と乗務員が隔離された旅客船が停泊させられていた。
とても近い所で起きていたけれど、一番非現実的に感じたことでもあった。私が歩いて通った道は穏やかで小綺麗で、公演は決められた場所で定時に始まり終わるというそんな繰り返しだった。私はぎこちない顔をして街を歩き公演を見て酒を飲んで睡眠を取る日々を送っていた。
振り返って見ると横浜での私の様子は見慣れないものではなかった。知らない建物の窓に照らされる私の顔をしばしばまるで違う人の顔のように錯覚するくらいだった。体も心もしっかり足を地面に踏みしめたいけど、実際にいざ自分がいたい場所がどこなのか、よくわからない気分。行かなければいけないのは何処なのか、そしてどこに行きたいのか。それらを確信出来ずにキョロキョロしながらを心許なく歩いているいつもの私の姿を、知らない場所でもっとはっきりと感じていた。
そんな状態で私はTPAM2020の最後の公演となる「ねじロール」と「オギヨディオラ」に出会ったのだ。それぞれ三十分あまりの二つのパフォーマンスが立て続けに上演されるこのプログラムは、TPAMディレクション(プログラムディレクター達によって紹介または企画されたプログラムが束ねられているセクション)の最後の公演でもあった。公演場所であるクリフサイドは外観から、廃業して随分経ったナイトクラブの気配をぷんぷん匂わせる場所だった。
ドアを開けると、年月を経た木と布の匂いが嗅覚を刺激した。過去の栄光が古いテーブルクロスとカーペットの染みの痕跡に記憶された場所だった。ロビーや階段にびっしり埋まった人々がいなくなってしまい今はもう空っぽになった空間が、ようやくブルースの音楽とともに「今にもマジで」ショーが始まりそうな空間だった。
客席の入場が始まると、観客達はロビーから相次いで階段を上り始めた。階段を上り切って到着した二階にはクリフサイドの一階のダンスホールとは区分された空間が設けられていた。ライブ公演を見ること、もしくは舞台に立つことには関心のない人々がそれぞれ集まってわいわいがやがやと酒を飲んでダンスを踊る物語を紡ぐ言葉を交わしそうな空間だった。
その空間で「オギヨディオラ」のパフォーマーであるモア・ジミンとアキラ・ザ・ハスラーが、ドラァグの扮装をし準備をしていた。二人のパフォーマーは、散らかった荷物衣装や小道具の間でまるでそこが自分の家であるかのように気楽な様子でメイクをしていて、観客たちはその姿を見ながら客席に通じる狭い通路に向かって相次いで歩いて行った。
私はその二人の姿を交互に眺めながら既に公演が始まっていたことにはっと気づいた。そして狭い通路の前に着くと、その通路の横のコンセントに携帯電話の充電器を差し込んだまま、しゃがみこんで座って、通話をする一人の男性の後ろ姿が見えた。「公演開始まであまり時間がないのにあの人はどんなに急な用があってああしているんだろ」
過去のどこかで、私も何回かは経験した、「緊迫した」行動も時空間を割るひとつのパフォーマンスのようだった。私は二階の狭い通路(下に一階のダンスホールが見下ろせるテラス)を通過して舞台(ダンスホール)が正面に見える一階のディナーテーブルに席を取った。
<ねじロール>
観客たちが席を取る時に生じる騒音と騒がしさは公演の開始時間が過ぎても続いた。おそらく舞台に設置されたスピーカーとサウンドシステムを通じて出て来る吃るような話し方の男性の声に神経が持っていかれるが、ぜんぜん無視もできるくらいの喧騒の中で観客たちのおしゃべりも継続された。
入場のさいに受け取った公演パンフレットをいじくり回す音と、バーに行ってドリンクチケットをビールやワインに変えてくる人たちが動く音で空間が散漫に満たされた。 <ねじロール>の梅田哲也(Umeda Tetsuya)と同僚のパフォーマーが舞台に登場して、サウンドシステムの前に座る動作も特別な気配もなく進行された。
二台の大型スピーカーの間に位置したサウンドシステムは、楽器を変形したものなのか変形して楽器になったものなのか分からない物体と、マイク、オーディオ・コンソール、そしてそれらを連結するラインで構成されていた。 パフォーマーが登場したから、もう何かが起きるのかなと思った瞬間、システムの合間に置かれている黒い旧式の電話機のベルが鳴った。 このベルは私がこの公演で明確に認知した二つの音のなかの一つだった。
ベルは鳴るが、受話器を取る人はいなかった。 梅田哲也が受話器を取り上げて、電話機の横に置いた。 まるで受信者はこの空間だとでもいうように。 そのため、さっきも流れたどもるような話し方の男性の声がもう少しよく聞こえるようだったが、依然として内容は分からなかった。 そして何を見なければならないのか聞かなければならないのか不明なこの状況を経験しているのは(おそらく)私だけではないようだった。
舞台の両側に見える、観客の視線もその焦点を失ったまま、それぞれ漂っていた。と、その時さっき通路にしゃがみ込むように座って電話をしていた男性が舞台の領域に歩いて入り、マイクの前に立ち泰然と通話を続けた。 やっと私はその人がもう一人のパフォーマーである捩子ぴじん(Neji Pijin)であり、これまで流れていた吃るような声の主人公であったいう事実を知ることになった。
若干の追加パフォーマンス(スプレームースを舞台の床にまいたり椅子の高さの構造物の上に立つアクション)がなかったわけではないが、彼は公演が終わるまで終始一貫してマイクを握り、言葉を「叫ぶ」行為を繰り返した。 そして他のパフォーマーたちによって作られた(あらかじめ計作ってあった)様々なサウンドが、彼の叫びをめぐって増幅された。 パフォーマンスが終わる頃に喉が裂けるほど繰り返して何かを訴えていた彼の声から「笛の音」がした。彼の声が裏返ったのだ。
その笛の音が私がこの公演ではっきりとはっきり認知した二番目の音だった。 最初に認知したベルの音が発信の始まりだったら、笛の音は重ねて滑ってしまう発信、あるいは、受信のずれを暗示するようだった。 彼の叫びのなかで、私がわかった内容は遂に一つもなかったが、後で彼が叫んだ言葉のなかに"Can you hear me?(私の話が聞こえるの?)"という言葉があったという事実を知ったとき、笑みがこぼれた。彼の数多くの叫びの中で、私は笛の音だけを受信したんだね。<ねじロール>は、対象と目的がなめらかに収束しない叫びと音をすべての空間にまき散らしながら終わった。 明確な受信させることは当初から発信する目的ではなかったというかのように。
<オギヨディオラ>
空間のあちこちにばら撒かれたエネルギーは、<オギヨディオラ>のパフォーマンスで一つずつ拾い集められた。 <ねじロール>の音が止むと、客席に入場した時から配備されていた、小道具や大道具たちが再び目に入って来た。サウンドシステムが置かれていた舞台の反対側、古いグランドピアノが置かれている空間(社交ダンスの交流の場だったクリフサイドで、ライブバンドの定位置だった空間)の両側に、約1.5×1.5メートルの段ボールに描かれた二つの山(mountain)がそびえ立っていた。 そしてグランドピアノの周辺には華やかな衣装やウイッグ、鏡などの小道具とバレーレッスンのためのバーが設置されていた。 私は前日に<オギヨディオラ>公演のために用意された練習室で、部分的にではあるけれど覗き見たパフォーマンスが、今日この空間でどのように実行されるのか期待しながら舞台まわりをもう一度ゆっくり見渡した。 その時、モアが舞台にフッと入ってきた。 ライブでドラァグクイーンの舞台を見るのははじめてだったので、彼が登場しただけで訳もなく胸騒ぎがし始めた。 彼は舞台にのぼり、精巧に描かれたラインと色が調和を成した自分の顔を鏡に映してみたり、靴や衣装といった小道具を手にするように動き、また舞台の外に出て行った。
ほどなく<オズの魔法使い>の挿入曲<Over the rainbow>の前奏が流れた。 そして白いショートカットのウイッグと白い木綿材質のオフショルダー・ドレスを着た、濃く厚いアイラインと彼のものよりさらに厚く赤い唇のアキラ・ザ・ハスラーが、はにかみながら舞台に登場してきた。 彼が歌の始まるポイントに合わせて唇を開いた瞬間、散漫だった空間の空気が彼の周辺に集まるのが感じられた。 彼のリップシンク、手ぶり、歩み、いたずらにスカートの下に隠しておいた、歌のラストに天井にバラバラに飛ばした半透明の黄色い風船まで私にはとても「リアル(real)」であるように感じられて、軽く狼狽するほどだった。
私は誇張されたジェスチャーや内容の公演をまっすぐに見ない方なのだが、アキラ・ザ・ハスラーのショーはもちろん、それに続くモア・ジミンの<It's oh so quiet-Bjork>の舞台も、動作や表情を一つも逃さないようにじっと見つめていた。モアの真っ赤な唇と同じくらい濃いチーク、白い巻き毛のショートカットのウイッグ、小さな白いドット柄が散りばめられた赤い水着。そして赤い靴、そのすべての扮装が本来彼の身体の一部であるかのように自然に感じられ、それでいて美しかった。 私が感じたリアルさと美しさは、舞台の特性を活用し、着飾った二人の華やかさに由来するものでもあったが、何より二人が表現しようとした感情、情緒そして歌の歌詞以上のドラマが、各自に与えられた3分弱の時間の中で、極めて具体的に作られたためだった。 私はにわかに二人の世界をそっとのぞいたような気さえした。
ⓒRody Shimazaki, TPAM - Performing Arts Meeting in Yokohama, 2020
各自のショーが終わるやいなや、すぐに次のパフォーマンスが続いた。 余韻を感じる間はなかった。二人はもうすでに一緒にやるショーを準備するかのごとく「突然」モアによるバレエのレッスンが始まった。バーを使って開始された「講習」は舞台の中央へとつながって行った。 プロのバレエダンサーであり、振付師のモアジミンが見せてくれる動作を真似するアキラ・ザ・ハスラーの姿はまるで大人の真似をしはしゃぐ子どものように見えたりもした。 二人の遊びは、チャイコフスキー(Peter I.Chaikovskii)の<白鳥の湖>の音楽に合わせて最高潮を迎えて、二羽の白鳥のように舞台裏に退場してショーはそのまま終わるかのように見えた。
しかし、すぐに二人は白とピンク色の白鳥の形をした浮き輪に乗って(正確に表現すると両足で引っ張って)オールを漕ぎながら舞台に出て来ると、客席の笑い声とともに異なる次元の遊びが再開された。その後に続いた二つの韓国語の歌に合わせた二人のパフォーマンスは、二人が一緒にドラァグショーを作る、その過程のように見えた。 観客の視線と流れる歌に合わせて二人はショーの場面を一つずつ作って行っていた。
"…天空の星も 大地の花も ひそやかに わが道を 生きてゆくように ふと気がつけば 河が微笑みかけている 私たちも 微笑みがこぼれる…"-<オギヨディオラ>
李尚恩の歌<オギヨディオラ>の穏かなメロディーに会場全体の雰囲気が敬虔になったのか、それともそっと互いに心を配るかのように、それぞれの船に乗って水路の上で出会った二人の動きは、終始一貫して軽くて愉快だった。 "オギヨディオラ"のフレーズがリフレインされると、二人はそれぞれの船から降りて一緒に通ってきた水の流れに白い布を広げた。 そして二人はまるで白い布の上に新しい水路を描くような感覚で空色の絵の具を塗り、撒いた。 そして空色の絵の具が塗られた川(水路)は2階のテラスの高さまで引き上げられて、舞台の正面であり、両側にそびえる山の間に(流れるように)置かれた。 そして間髪を入れずに二人のパフォーマーはすぐに始まる次のショーのために衣装をチェンジし、順次舞台の両脇に置かれた山(山の絵が貼りつけられた構造物)の上に上がった。 二人がそれぞれの峰に上がると、二つめの歌である楊姫銀(ヤン・ヒウン)の<私たちが登る峰は>のナレーションが始まった。
ⓒHideto Maezawa, TPAM - Performing Arts Meeting in Yokohama, 2020
モア・ジミンは明瞭な表情と口の動き、そして手振りで、自分が登った峰にまつわる話を聞かせ始めた。 その場に韓国語の歌詞を聞き分けることができる観客は多くても5人程度だったため、ほとんどの観客は英語/日本語の歌詞が書かれたパンフレットや、モアのジェスチャーを交互に眺めながら彼の話に耳を傾けた。それは孤独に自身の峰を登っている友達に手渡す励ましだった。 そんなふうに各自の峰で始まった慰めだが、「友達よ」のフレーズのリフレインが始まる頃には二人のパフォーマーは各自の山から降ろし、出会わせ、今度は共に他の山(2階のテラス)を登らせた。
歌がクライマックスに近づくと、二人のパフォーマーは、観客らが公演前に通って来ていた2階テラスの両側の通路を通り、先ほど二人が共に描いた水路の上に並んで立ってプラカードを広げた。 プラカードには、まさにそのときに流れていた歌詞の内容の文句が書かれていた。 "だから友よ 私たちが登る峰は すぐ今のここかもしれないよ"
公演は「まさに今ここ」に集まった人々の耳目を二人のパフォーマーが到着した地点に集中させ、終わった。
驚いたことに<オギヨディオラ>のすべてのパフォーマンスを見るのにかかった時間はわずか30分だった。 二人のパフォーマーは停泊するまで延々とオールを漕いで行かなければならない船頭のようにせっせと、そして休む間もなくパフォーマンスを遂行した。 プログラムディレクターと2人のパフォーマーが公演に込めようとしたメッセージと「こうすれば面白そうだ」と想像した要素が決められた時間内に舞台の上で一つずつクリアになった。 パフォーマンスを一つずつクリアする度にモアが息を切らしながら吐き出した息の音、まるで合いの手や囃し言葉のようだったハイトーンの「はっ!」という音が、私がいま見ているものが何なのかをその度に想起させてくれた。 <ねじロール>での「笛の音」がそうであったように。
ⓒHideto Maezawa, TPAM - Performing Arts Meeting in Yokohama, 2020
公演場で、不慣れな場所で、そして日常でも私はしばしば「まさに今ここ」という感覚を失ってしまう。それは私を取り巻く状況と関係が、たとえどこにいても私に影響を与えているためでもあるが、しきりに今ここにないもの、あるいは私が望んでいないことを欲する真似をするからでもある。 私は今ここに無いものについて話す時、不安な気持ちになり、今踏みしめている地面も,そばにいる人もリアルに感じられなくなったりする。 そんな私に見知らぬ場所での最後の公演であった<ねじロール>と<オギヨディオラ>は、足元に感じられた古いカーペットの感触、そして私が見ているものの表面と裏面を感じられる時空間をその瞬間、開いてくれた。
公演が終わって宿所に戻って、次の日に韓国に発つ準備をしながら李尚恩の"オギヨディオラ"をもう一度聴いてみた。 すると他のどの歌詞より"さあさあ 船を漕いで"というフレーズが耳にすっと入ってきた。 私が漕いできた、そしてこれから漕がなければならないオールのことについて、そして一緒にオールを漕いでいる人たちについて考えた。 私はまた見知らぬ気持ちに酔って、どこか分からないところをうろうろするだろうことは明らかだが、少なくともその瞬間だけはせっせとオールを漕いで向かうべきところがどこなのか、少し鮮やかにはっきりしたのだ。
テキスト: シン・ジェ (演出家・韓国)
とにかく漕げ 死ぬまで漕げ
photo: Rody Shimazaki
Akira the Hustler/Jong YuGyong
Photo:Yui Hasegawa
Cloud man& the Banner
Photo:Rody Shimazaki

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Akira the Hustler,2018
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