彼/彼女
聞き流してくれていいんだけど、と彼女。
もうひとつ、どうでもいいんだけどさ、は彼女の常套句だった。
「私があなたと見るのは決まって、月なのよ。」
「違うの、それは。私がみたいのは、月じゃない。」
明快でわかりやすく意見をまとめてくれるのが、良いところだった。
ただ時々、謎解きのような言葉を投げてくるのもまた、彼女だった。
彼女はとても賢い。勉強ができるだとか、そういう類のことではなく、頭が良かった。
こういう時、どういうことかを尋ねると、「聞き流してって言ったでしょ」と一蹴されてしまう。
いつもなら、大きく日を空けて答え合わせの時間があるはずだった。
しかし今回ばかりは、二度とその日が訪れることはなかった。
とある日、残業で仕事を片付けた頃には既に、夜が明けていた。
帰るために外に出て、空を見上げると、綺麗な朝焼けが広がっていた。
その時にふと思い付いたことが、彼女の言葉の答えだったのかもしれない。













