Peter Framptonの"Baby, I Love Your Way"。Peter の当時の恋人に贈ったとされるバラード。アコースティック・ギターに流れるようにまとわりつくキーボードが美しく印象的だ。The Beatlesの"Blackbird"にインスパイアされた曲でもある。テーマやギターの奏法も異なるが、曲調は確かに"Blackbird"を彷彿とさせるところがある。
ライブとしては、"Frampton Comes Alive"リリース後のまさに Peter の全盛期に当たる時期だ。真夏のオークランドでの昼間のライブ。特に記載はないが、オーディエンスの様子から推察すると、何かの音楽フェスでの演奏と思われる。Peter がソロとして、米国で地道にライブ活動を積み重ねてきた成果がここに現れている。
いかにも70年代らしく、メロディックでポップな仕上がりになったラブソングである。随分前に見た George Harrison のドキュメンタリー映画で、「ジョージも曲作りをするようになってきました」といった字幕の後、ホテルの自室に入っていく George の背中に記者が「曲作りのテーマはありますか」と尋ねるシーンがあった。George は歩みを止めることなくさらに振り返ることもなく「Love and angry」と即座に答えた。字幕には「愛と怒りさ」と訳された。
この時私が感じたことは、この"Love and Angry"というテーマは、Georgeだけではなく John や Paul をも含めた The Beatles の曲作りに共通したテーマなのではないかという点だった。George の曲は、この2つのテーマに偏っている感はあるが、John と Paul は様々な種類の事象をテーマとしており、必ずしもこの2つのテーマとは限らない。しかしながら、厳密に数えたわけではないが、The Beatles 時代とその後のソロの時代を含めても、半数程度はこの2つをテーマにしているのではないか。John と Paul にとっても、「愛と怒り」は主要なテーマだったように感じる。
ここで、"Baby, I Love Your Way" がインスパイアされた元の曲である The Beatles の "Blackbird"について,、改めて考えてみる。これは、黒人に対して希望と勇気を与える応援歌とも言える曲である。"bird"は若い女性を意味するスラングでもあるので、暗に黒人女性に対して贈られた曲と考えられる。いうまでもなく、かつての奴隷制度から始まる黒人差別に対する「怒り」が背景にある。当時、米国ではレストランやトイレは白人と黒人で分かれていた。米国公演でこの現実を目の当たりにした The Beatles のメンバーはその現実に対して疑問を隠さなかった。これはおかしい、あってはならないことだ、と。これに関するやりとりは、映画「エイト・デイズ・ア・ウィーク」に収められている。これらを考えると、黒人差別に対する怒りを応援歌として黒人愛に昇華させたのがこの "Blackbird" と言える。つまり、この楽曲には、先の2つのテーマである「愛と怒り」の両方が込められている事になる。だが、黒人差別に最も怒りを露わにしていた John は、その怒りを作品にはしていない。
なおこの "Blackbird" は、Paul McCartney の今年の米国ツアーでも演奏されている。米国ツアーではなくてはならない1曲になっているようだ。アコースティック・ギター1本で歌い上げる "Blackbird"。同じ演奏スタイルの曲に、Paul の代表曲としての "Yesterday" がある。だが、私は "Yesterday" よりも "Blackbird" の方がお気に入りだったりする。
かつて、音楽の一つのジャンルであった反戦歌。これも戦争、当時はベトナム戦争だったが、それに対する怒りから生まれたと考えられる。「愛と怒り」は、音楽の一つのジャンルさえ作り出してきたのだ。
この「愛と怒り」。これをもう少し広い概念で考えれば、「好き・嫌い」に帰着するかもしれない。この「好き・嫌い」の両端に位置するのが「愛と怒り」とも考えられる。結局、あらゆる事に対する人間の感情や行動は、説明のできないこの「好き・嫌い」の感情に支配されているのだ。
ここまで考えてくると気がつくが、今まで作られてきた無数の楽曲の多くは、この「愛と怒り」をテーマとしていると考えられる。どの程度の割合であるのか、そんなことは問題ではない。またこれは、音楽の世界のみならずアート全体にも当てはまるかもしれない。「愛と怒り」、これこそがアートを生み出す原動力となってきたのではないだろうか。


















