すっかりご報告が遅くなりましたが、埼玉県所沢市の「トトロの森」で開催した写真展「里山昆虫紳士録ー虫の顔さがしー」、たくさんの方にお越しいただきまして、ありがとうございました。最終日、大学卒業以来会っていなかった古い友人が、奥さんと子供を連れて訪ねてくれた時には本当にびっくりしましたし、なんだか目頭が熱くなりました。展示はおろか、自分の写真をきちんと印刷すること自体が初めてという手探りの会でしたが、こんな機会をいただいて、みなさまと楽しい時間をご一緒できたことを、本当にうれしく思いました。
このトトロの森の管理団体である公益財団法人「トトロのふるさと基金」は、宮崎駿さんらを呼びかけ人とするトラスト運動として、26年前に1つの小さな区画を買い取って以来、映画「となりのトトロ」のモデルとなった狭山丘陵に点在する森を維持管理することを通じて、行政をはじめとする諸団体を動かし、「狭山茶」の茶畑と雑木林を中心とする里山の風景を現在に伝える原動力になってきた組織です。現在では46ヶ所を数えるそれぞれのトトロの森には、植生調査に基づいた管理方針が設定され、各々で異なる森の個性を維持することで、地域全体としての環境の多様性を担保し、結果として多くの貴重な生物と身近に接することができる環境が形成されてきました。私は去年の5月から、森の散策会やガイドツアー、生物の調査のお手伝いをしていますが、来場者の方々にどうやって実際の自然への関心を喚起するか、ツアーの打ち合わせでもいつも議論の的になってきました。
そこで今回写真展のお話をいただいて、せっかくの機会、展示を通じて里山の生物の面白さを見つけてもらおう、と、職員の方とご相談しながら仕掛けを作りました。メインとなる21枚の昆虫の顔写真には、敢えて名前や解説のキャプションをつけず、それがどんな昆虫の顔なのか、来場者によく見て想像しながら、お気に入りの虫を見つけてもらう趣向です。展示する昆虫も、トトロの森や町田の里山など東京近郊で撮影したものに絞り、決して珍しくはないけれど、じっくり観察すると意外な魅力があるもの、を中心に選びました。そして左側の壁には答え合わせとして、同じ昆虫の全体像と名前、そしていつどんなところで出会えるかのヒントを掲示しました。子供たちが、会場の土蔵の中を、これなんだ、あれなんだ、と考えながら走り回ってくれたら、という目論見でしたが、多くの少年少女たちが実際にそうしてくれたのは、とてもうれしいことでした。
特に印象に残ったのは、たまたま会場の外にいたキバラヘリカメムシ(黄腹縁椿象)という、なかなかスタイリッシュなデザインの昆虫を見せた子供たちのこと。最初は、えーカメムシーくさそー、と遠慮がちだった彼らですが、刺激せずに手に乗せてやれば臭わないことを見せると、みなみな手に手に遊び始めます。来場してくれた子供には、展示写真を小さく印刷したカードをお土産に渡すことにしていたのですが、彼らに何がいいか尋ねると、人気のクワガタにもカマキリにも目もくれず、「カメムシ!」とおねだり。僕にとってほんの一瞬の出来事が、彼らにとっては長く記憶に残る時間になるのかもしれない、と、はっとさせられたひと時でもありました。
実は、昆虫を面白がってもらった勢いで、会場から徒歩10分ほどのところにあるトトロの森の中まで、実際に歩いてもらうのが、本当の狙いだったのですが、こちらは秋の長雨と台風でなかなか思うようにいかずに残念でした。来年も3月から、一日かけてトトロの森を歩く散策会、また、短い時間でトトロの森と活動拠点の古民家「クロスケの家」を紹介する週末のガイドツアーが予定されています。日時が決まりましたら、折々ここでもご案内しますので、機会があれば、春の気持ちのよい雑木林の散歩をご一緒しましょう。
最後になりましたが、展示の企画・運営・設営の何から何までお世話になったトトロのふるさと基金の花澤さん、トトロの森とのご縁をつないでいただき、その後もお世話になりっぱなしのスタジオジブリの深谷さん、そして応援していただいたみなさまに、この場を借りて、改めて御礼を申し上げます。


















