2026-05-31 劇場版 モノノ怪 蛇神 を観てきた。
劇場版 モノノ怪 3部作の完結編。大奥を舞台とした一連の話が終結。良き。いくつか書き残したいトピックがあるのでセクション分けする。
三角形のモチーフ
まず本作は冒頭からして三角の紙吹雪(?)の舞うシーンからはじまり、蛇神が大奥の建物の壁の中をうごめく時も三角形がジッパーのように噛みあったシンボルとして描かれ、顕現した時もおもちゃの「ルービックスネーク」みたいに三角形が組み合わさった胴体を持つなど蛇神を象徴するモチーフとして三角形が多用されている。お能の装束などでも蛇体の鱗を表現する「鱗文様」がこのように二等辺三角形を並べたもので表現されるので、そこから来ているのかなと思う。しかし思い返すと第1章の唐傘の時から女中たちが「お水様」の水を飲む時の升は不自然に三角形だったし、最初からこのデザインモチーフは考えられていたのかなと思うとなかなかすごい。ただ物語をよくみると「お水様」と「蛇神」は別のものでむしろ敵対関係とも言えるので、なぜお水様信仰の儀式のなかに蛇神を象徴する三角形が使われていたのかは少し謎が残る。
もうひとつこの三角形のモチーフが効果的に使われていたなと思うのが、薬売りのいつもの武器(?)として護符を大量に使って壁のようにして防御結界としたり追い込んだりするのだけど、これは四角形の形状となっていて、方 vs 三角という形状のコントラストがうまれていて、これはあんまりみない対比だなと思って小気味良かった。ラスト近く「蛇神」が切られた後にも、花火のような爆発のあと直方体の断片として散るなか 1片だけ三角の破片が残るなど、この対比は徹底して描かれていて明確な意図が感じられる。
ただ退魔の剣が抜かれてハイパー薬売り(神儀)になった時の剣の表現が今回は鎖状になっていて、こちらも三角形が連なってしなるデザインになっていたのはこれは逆に蛇の身体のしなりにあわせてるのかなという感じ。ちょっとチェーンソーみたいな SE も入れていた。
簡潔なストーリー(あるいは「真」と「理」)
「唐傘」「火鼠」に比べると本作での情念を探る物語はややストレートでわかりやすい。既に薬売りが坂下やボタンから信頼を得ているため動きやすく、モノノ怪が出たという状況説明も不要なのも話のスムーズさに繋がっていようと思うが、蛇神の「理」つまり死産の悲嘆と偽りの赤子を押しつけられる不条理が最初から隠されておらず、ひいては大奥というメカニズムそのものに対する怒りも第1、2章からずっと引き継いできているものなので、謎を解明しているという感覚はあまりない。「真」については150年前の3代天子のころの因縁なので真相を知るという意味での驚きはあれど話の内容はシンプルといっても良い。これはこの後の「百目」が控えているから「蛇神」であまり凝って時間を使えないという作劇上の都合もあったものだろう。
前作まででお水様を祭っている謎の男・溝呂木がいかにもあやしげだったのだが、ぜんぜん普通の人間だったし悪役というわけでもなかったのはなんというか拍子抜けはした。天子の血筋についての秘密の保持者ではあったわけだが。
隠されたモノノ怪・百目
というわけでこの三部作のラスボスは蛇神ではなく、150年前の第三代天子の乳母であり大奥の創始者の天局(あまのつぼね)が即身成仏し「お水様」として祭られることになったことで、すべての人の情念をたばねて産まれた「百目」。という説明はたぶん間違いなんだろうな。天局は核というよりきっかけのようなもので、彼女が作りあげたシステムである大奥が多くの人の感情的な負債を溜め込み淀む構造を生んでしまい、そこに生じたのが遍く人々の想いをみつめる瞳である百目というモノノ怪。全ての人の「気持ち」を反映しているということでこれまでのモノノ怪とはスケールがちょっと違う。ということでハイパー薬売り(神儀)さんもこいつは斬れない。
離の剣の薬売り
ここで劇場版第1章で「この薬売り(坤の剣)はTV版の薬売りとは別の個体で、薬売りは64の退魔の剣ぶんいるのだ」という設定が生きてきて、離の剣を召喚すると TV 版薬売りが登場するという劇アツ展開。いうなればヒーロー戦隊ものの劇場版で過去作ヒーローが集結するやつとか歴代プリキュアが集結するやつ。たっ 2人だけどな!! そういえば「蛇神」の顕現時にも「唐傘」と「火鼠」が再登場していて、そこもプチ過去作からの再登場というのが使われてたな。
しかしこうしてみると TV 版薬売りのデザインと劇場版は結構違うというか、ひと目みただけで「あっ、これは TV 版の薬売りだ!!」とわかったのがすごく良かった。色彩設計から違うんだよな。なのでちょっと浮いてみえた。あとハイパーになった時の色もそういえば違ったんだよなぁ。ハイパーのデザインは TV 版のほうが好き。ちなみに声優も櫻井さん。
まあ2人の神儀が揃っても百目は「一旦斬った」というくらいで滅することはできないようで、エンディングでもモノノ怪を象徴する3つ目の小さな怪がそこらじゅうに居る。人の世のあるかぎりモノノ怪の種はなくならない。
天道虫
「モノノ怪」といえばあの天秤がマスコットキャラ的に愛されていると思うが(作中でも前回薬売りが忘れていった? 天秤のひとつを坂下さんが可愛がっていたらしい)、今回あらたに「天道虫」というサポート役が登場していた。飛び回って探索や監視を行う索敵要員という感じで、地味ではあるけどこれまた可愛らしいのでグッズにしたら人気出るだろうなーと思ったのだが今日の劇場には置いてなかった。無念。
えらく長く書いてしまった。大奥編はこれで完結なのだろうけど、薬売りは64、そのなかでも特別な 8体がいるということなのでまだ他の薬売りで新作も作れるということ。期待したい。とはいえ、今日の劇場では本作は 1ラインだけで席数も小さめ。正直メジャーなタイトルではない扱い。こんなにいい作品なのに世間一般的にはマニア向け作品という位置付けなのだろう。なんとか商業的な成功もして続いてくれることを期待したい。のでもう一度観てもいいかな。

















