大学生のころに入っていたサークルに、ひとり年上の先輩がいた。27、8歳くらいだったと思う。金髪にメッシュの入った最年長の先輩に近寄り難かったのは自分だけではなく、ほかのだれかと談笑している姿はあまり記憶していない。たしか他の大学を出て一度就職した後、退職して僕の大学に入ってきたという噂だった。
サークルでミーティングかなにかがあって、その人が発言したことがあった。話の脈絡はまったく覚えていない。おもむろに挙手して立ち上がった先輩を、僕は座ったまま見上げていた。周りになんとなく漂う冷めた空気。
先輩がみんなに向かってなにかを話し始めた。なにか、というのは、内容をまったく覚えていないからなのだけど、一つだけ強烈に覚えていることがある。先輩は話の真ん中あたりで、「苦労している人間は、だれかに必要とされている人間です」と言った。先輩から見れば自分以外の誰ひとりとして社会人経験がない、僕らはツルツルの子どもだったのだろう。その時に僕は、なにか大事な羅針盤をふいに投げて渡された気がした。
それから少しして学内の就活セミナーで、自分より二年くらい先に就職したOB、OGが、大学生の僕らに社会人の実情を教えてくれたことがあった。周りの参加者は熱心にメモを取っていたけど、たかが社会人三年目の人にアドバイスされても、と僕は冷めた目で見ていた。もちろん僕にも社会人経験は無かったけど、謎の経歴をもつ先輩の言葉の方がよっぽど背中を押してくれると確信していた。
ツルツルの子どもから一応は社会人になって、それなりに苦労し、なにもかも投げ出したくなった時に思い出す。あの奇抜な髪色と、それでも人生を前に進めるための言葉。













