第8話:焦げる魂の味、あるいは「あべこべ」という名の劇薬
「『自分を大切に』。その正論が、現場の硝煙の中でいかに無力か。首筋を焼く痛みと、受話器の冷たさの間で、私は己の醜悪な真実を掘り当てた。これは、地獄を資産に変える男の覚悟の記録だ。」 第8話:焦げる魂の味、あるいは「あべこべ」という名の劇薬 受話器を握る。その黒いプラスチックの塊は、死んで横たわる獣のように冷たい。 名は聖孝(セイコウ)。 東日本の広大な草地を、声という名の銃弾で撃ち抜くテレアポの修羅場。 男は今、その最前線に立っていた。 「もしもし、重機や特殊車両の……」 喉を震わせ、言葉を吐き出す。 その瞬間だ。首の神経を、誰かが赤く焼けたナイフでなぞった。 「ヒリ、リ」 熱い。甲状腺のあたりに、不吉な痛みが芽吹いている。 俺は知っている。仕事なんて替えのきくパーツだ。この身体、この魂こそが聖域なのだと。 だが、現場の煙を吸い込んだ途端、その理(ことわり)は…







