吉田:東大でVR(拡張現実)の研究をされている鳴海拓志先生という方と対談したんですが、VRの最終的な結論は「現実世界での経験が多い人ほどVRをより楽しく感じられる」っておっしゃっていたんですよ。 川上:なるほどね。僕はVRが発展していくのはまだまだ先だと思っていたんです。なぜかというと、現実のリアルなシミュレーションを真面目にやろうとしたら、今のコンピュータ性能では全然足りないから。でも結局、現実をリアルに再現する必要はまったくなかったんですよね。 そもそも人間の脳は少しの情報量しか理解しない。むしろ現実の情報量が多すぎるから、アニメが好まれるんです。 吉田:だから子どもはアニメが好きなんですね。 川上:特に小さい子どもほど処理できる情報量が少ないから、アニメのほうが理解しやすいわけですよ。現実から情報を抽出するよりも、アニメから抽出したほうが受け取る情報量が多くなるのが子どもなんです。 だから今のVRは現実空間をアニメ化したくらいの情報量なんだけれど、これくらいで十分。もう進化する必要はない。むしろ客観的情報量から抽出できる主観的情報量の「量」のほうが重要なんですよ。どれだけ多くの情報を人間が引き出せるか。 だとすると、最初から単純にしているVR世界のほうが、人間にとってはより豊かな世界に見えるんです。宮崎アニメがそうであるように。実写のビデオよりも宮崎アニメのほうが情報量が多く見えるというのは、そこから引き出せる主観的情報量が多いからなんですね。
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