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ヒトラー、毛沢東については、僕はけっこうさまざまな歴史を扱った本や伝記を読んできたのですが、この新書でいちばん印象に残ったのは、スターリンの処世術でした。 この3人は、いずれもエリート階級の出身ではなく、叩き上げで権力を握った人たちです。 マルクス、レーニンというインテリがつくりあげた社会主義の理念は、ともすれば「頭でっかち」になりがちなものがありました。 そんななかで、スターリンは、現場で「汚れ仕事」を行うことにより、重宝されていくのです。 まず、前科者たちを組織して、商店主、銀行、資産家などをまわり、政治献金を求める運動を始めた。ようするに、脅迫して金を出させたのだ。 さらに、前科者を相棒にして売春宿を経営した。客が払った金の1割を女に渡し、相棒が宿の経費を含めて5割を取り、残りの4割をスターリンが取った。そしてスターリンはその売春宿の最大の「客」でもあった。 社会主義の立場では売春は「いけないこと」だ。一般論としても、売春は、裏の仕事、陰の仕事であり、褒められる仕事ではない。 スターリンが売春宿で儲けていることを知ったレーニンは、さすがにこれはまずいと考え、「ボリシェヴィキの名誉が傷つくから、やめろ」と伝えた。 しかしスターリンは反論した。娼婦になるしかない女がいて、それを買う男がいる以上、自分がやらなくても誰かが売春宿を経営する。自分のところの娼婦は他よりも待遇がよく、みんな喜んでいるーーそう開き直った。だが、レーニンから強く言われたので、やめた。 売春宿の経営はやめたが、スターリンは娼婦たちに個人営業の街娼をやらせ、前科者を集めて街娼の護衛をする組織を作った。街娼は護衛たちに保険料を払い、その代わりに何かあった時に守ってもらえるというシステムだ。もちろん、スターリンが、その保険料の上前をはねる。 合法、非合法を問わず、スターリンは党のために金を稼いだ。 こうしてソ連共産党の前身であるロシア社会主義民主労働党の恥部、暗部の仕事をしたことで、レーニンをはじめとする幹部たちの弱みも握った。自分をないがしろにしたら、これまでの悪事をばらしてやる。そうなったら党の信用はガタ落ちだ。それでいいのか――と、口には出さなくても、スターリンから睨まれると、誰もが恐れるようになる。この男を敵にしてはいけない。何をするか分からない――そう思わせるだけで、党内抗争においては有利だった。そして国際政治においても。 このように、危ない仕事・汚い仕事に他人も巻き込んで共犯関係を作って相手の弱みを握る――親しくなって弱みを見つけるのではなく、弱みを作り出して、相手を屈服させるというのが、スターリンの人生の基本戦略となる。 党を維持し、「革命」を遂行するためには、やはり、カネが必要なのです。 でも、「きれいなカネ」だけでは、足りない。 そこで、スターリンのような「汚れ仕事を引き受ける人物」が台頭してくることになります。 知識階級の理論家たちは「あいつはあんな汚い仕事をやっている」とスターリンを蔑む一方で、スターリンが生み出すカネがなければ、何もできません。 スターリンの伝記を読んでいると、「彼は何がしたくて権力を握ったのだろう?」と、考え込んでしまいます。 スターリンは会議には必ず遅刻した。これも彼の処世術といえるかもしれない。組織のなかでいちばん目立つにはどうしたらいいかという、初歩的なテクニックだ。全員が揃っているところに遅れて来れば、それだけで注目される。その時、コソコソと「遅れてすみません」という態度で来たのではダメだ。堂々と遅刻する。そうすると、別に偉くもないのに、なんだか偉そうに見える。 そしてスターリンは会議ではいつも最後まで何も発言しなかった。全員がそれぞれの意見を言うのを聞き終えてから、発言する。まず、いままでに出た意見をいくつかに分類し、それぞれを比較してみせる。みな、聞き入るしかない。そのまとめ方が的確なので、誰も異論を挟まない。こうして、全員がスターリンの言うことに聞き入ったところで、彼自身の意見を述べると、いつの間にかそれが会議の決定事項となる。これがスターリンの会議術だった。 スターリンとしては、会議に出るまでは、自分の考えなど持っていなくていい。他人が発言した意見で最も支持を得そうなものを、自分の意見としてしまえばいいのだ。それを積み重ねることで、いつしか「スターリンはいつも正しいことを言う」とのイメージが出来上がった。 「スターリンは、いつも正しいことを言う」とみなされていたのかもしれませんが、「スターリンは自分の意見というのを持たず、常に『勝てる側』に居ることだけを考えていた」ようにも思われます。 つまり、「自分の理想を実現するために、権力を握る」のではなくて、ただひたすら「権力を握ることそのものが目的」だったのではないか、と。 レーニンの死後、スターリンが書記長に選ばれたときの状況について。 大会の後、中央委員会総会が開かれ、書記長を選ぶことになった。スターリンは、これまでにも使った手だが、いったん辞意を表明した。レーニンの遺言には従うべきなので、自分は辞めます、というわけである。 しかし、中央委員たちはスターリンに投票した。カーメネフ、ジノヴィエフはトロツキーを憎み、トロツキーは二人を軽蔑しており、そしてさらに、カーメネフとジノヴィエフも、反トロツキーでは一致するが互いに仲が悪い。 スターリンは誰からも好かれていないが、誰にとっても「一番嫌いな奴」でもなかった。あいつを書記長にするくらいならスターリンのほうがましだという力学で、スターリンは書記長に再任された。 いままでは、スターリン書記長の任命責任は偉大なるレーニンにあったが、レーニンの死後、スターリンを書記長にしたのは中央委員会の総意となったのだ。 「嫌いなあいつよりも、スターリンのほうがマシ」みんながそう思ったことで、スターリンは権力の座についたのです。 ちなみに、ここに出てくるカーメネフ、ジノヴィエフはスターリンに粛清され、トロツキーは亡命先で暗殺されました。 スターリンに反感を抱いている者は多い。中央委員会のメンバーのほとんどがそうだといってもいい。それなのに反スターリン派が結束できなかったのは、共産党の幹部となった者たちの多くがインテリだったからだ。彼らには自分なりの革命観、どのような社会にすべきかといった思想があった。理論があった。党内での論争は、そういう思想的な路線対立だったので、「スターリンは嫌いだ」という感情論だけでは結束できなかったのだ。 こういうのがまさに「インテリの弱点」であり、スターリンは、そのことを熟知していたのではないか、と思われます。 イデオロギーよりも、ひたすら権力を掴み、それを守ることだけに力を注いだ男に、彼らは、どう見えていたのでしょうか。 フルシチョフが党大会でスターリン時代の「大粛清」を明らかにしたのは、スターリンの死から三年後の1956年2月の党大会での秘密会議だった。しかしすぐに西側に漏れ、世界中に衝撃を与えた。世界史的にも異常な大粛清での犠牲者はいまだにはっきりしないが、数十万人から数百万人まで諸説ある。 この新書、3人の独裁者たちが並行して語られることにより、その共通点、そして相違点が浮き彫りにされる、なかなか興味深い内容でした。 これを読むと、彼らの「出世学」を実行するというのは、普通の人間には無理だよなあ、と圧倒されてしまいます。 良い子のみなさんは、けっしてマネしないでくださいね。マネできないとは思うけど。
琥珀色の戯言
悪の出世学 ヒトラー・スターリン・毛沢東 (幻冬舎新書)
作者: 中川右介
(via hutaba)
わかったわかった。お前は変わり者。人と違う感性。only one。豊かな感受性で世界を見つめている。なかなか気づけない小さな奇跡を一つ一つ拾い上げては胸にしまっている。すごいよ。尊敬するよ
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“美しきものに出会うことに 微塵もためらうな。 美しきものに翻弄されることに 微塵もためらうな。 その美しきものは自分の内に もともとあったものだ。 その美しきものに出会えたら その灯火を内に秘め、絶やすでないぞ。”
— (via stilllll)
“Mark Adams”, 1985, via press_sf on Instagram.
Postmodern Dream. Judge Business School. Cambridge. John Outram. 1991🇬🇧 follow instagram.com/neontalk for more
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