季節が駆け足で進んでいく。四季の中を乗り回した黒い自転車は錆びついて、走る度にチェーンの軋んだ音を鳴らしていた。ギアを変えてもカタンとスムーズに変則はできない。確実に劣化しているこの自転車は思えば僕を様々な場所に連れて行ってくれた。
上京したばかりの頃、フィルムカメラをカバンに忍ばせてありとあらゆる場所を共に走った。東京タワーを観に行った時のことは鮮明に覚えている。何度も携帯で地図アプリを開き少しずつ目的地である東京タワーに近づくことに胸を踊らせた僕がそこにはいた。田舎で育った僕が東京の道路を自転車で走るなんてとても違和感を感じる話だけれども、今ではそんなことですら普遍化しあの頃の衝撃に近い感情を思い出す日はそう多くない。
その一方で僕が居なければこの自転車は何処へも行けずにそこに有り続けただけということ。この自転車が無かったら僕の行動範囲は著しく狭まり見たことがない場所は見たことがないままだったに違いない。身近な人やものが自分の世界を広げてくれるということを自転車を通して再確認できた。僕も誰かにとって刺激を与えたりプラスになるような人間になりたいと思う。



















