REVIEW: paranoid void // travels in my universe (2022)
artist: paranoid void
album: travels in my universe
year: 2022
country: Japan
label: -
FFO: avantgarde music, experimental music, jazz, post rock, Elephant Gym, 65daysofstatic, MONO
まるで蒸気のように浮かび上がっては消える明晰夢。
paranoid voidのセカンドフルレンス「travels in my universe」は異質。過去の作品とは全く趣旨、趣向が異なり、「旅路」をイメージしたそれは内省的でありつつも無限に広がりを見せる。相反する魅力が同居するもので、2022年を代表する傑作だと思う。
オープニングを飾る“MASAYUME”を聴いてすぐ、彼らの今の魅力の一面を断片的にでも感じられるはず。従来の快活なマスロック〜マスポップ的音像を抑えるとともに、彼らの一つの持ち味であった歌声は鳴りを潜める。他方、音の反響により鮮明に象られた空間は、まるで内なる宇宙をたゆたう疑似体験を与えてくれる。それらこそが全体を通しての最も大きな変化でもあり、今作における主題、且つそもそもの音の質にまつわる根幹の部分かと。
※ちなみにSEの鼓動は、MEGURIさんの心臓の音を使っているそう
緻密に構成された没入感は、昨今における65daysofstaticやMONOが生み出すサウンドスケープとも重なっていく。ただ、それらポストロック然としたバンドと大きく異なるのは、外に広がっていく厳かさではなく、より個人に纏わる内省的な様子が窺えるところだ。カチリと決まった無機質的な音と交錯しながら、作品を通じてElephant Gymのような有機的な生々しさ、一音一音を丁寧に磨き上げた繊細な音づくりが息衝く。
組曲的に「travel」と名付けた“doze”、“dream”、“after words”の3曲にはそれを強く感じる。それぞれの曲には夢想する「私」がいるようで、それぞれが異なる私であり、いずれも一つのわたしであり。ふわふわと漂うような“doze”から段々と輪郭を取り戻していく様は、やがて意識が覚醒に向かっていくかのようにも。ある種聴くコンセプチュアル・アートのように感じる。
個人的に特に刺さったのは、破綻と再構成を繰り返すエクスペリメンタル、フリージャズのような10曲目“Another world”、緻密なクラウトロック然とした楽曲でラストを彩る“The end of the travel,The beginning of the world”の流れ。様々な音楽性が入り乱れつつも、全てが作品として同じ方向を向いている。
名目上曲ごとの切れ目こそあれど、サブスクのストリーミングサービスによるぶつ切り視聴が主流となった時勢に対し真っ向から反する構成には、個人的にもニヤついてしまう(とはいってもそこを意識している感じではなく、自然とこうなったという印象が強い)。気軽に、そして深くこの音体験をしたければ、周りの音を遮断してヘッドホンを使ってみるといい。こう、表現物として完成されている様子には、「アルバムとはこうであってこそ!」と思ってしまうのは、完全に私の願望でしかないけれど。
※ぴあにおいて公開されているインタビューを読むと、今作を一層楽しめるかと。こちらも是非。
paranoid void
web: https://www.paranoidvoid.com/
stream: https://friendship.lnk.to/timu
女性3ピースマスロックバンドparanoid void(パラノイドボイド)公式。 浮遊感あるギターサウンドと絶え間なく表情を変えるリズムフレーズ。変拍子やポリリズムを織り交ぜたインストゥルメンタル。 Female 3 piece math rock band paranoid
event: 2022.10.7 月見ル君想フ(東京) w DÉ DÉ MOUSE











